ロームが「GaNパワー半導体」参入、シェア10%早期獲得の勝算
ロームは今春にも窒化ガリウム(GaN)製パワー半導体市場に参入する。LSI(大規模集積回路)生産子会社のローム浜松(浜松市南区)に新設備を導入。150ボルト耐圧のGaN製高電子移動度トランジスタ(HEMT)などを量産する。拡大するデータセンター(DC)向け電源需要などを狙う。2030年までにGaNデバイス市場が約1000億円に上ると試算。早期にシェア10%を目指す。
ロームが量産を始めるのは、ゲート・ソース間の定格電圧を業界最高レベルの8ボルトに高め、信頼性を高めたGaN製HEMT。GaNデバイスをシリコン(Si)基板上に作製する「GaN―on―Si(ガン・オン・シリコン)」の技術を用いる。
GaNの成膜から回路形成、完成品テストまでをグループの国内外の拠点で一貫して担う計画だ。投資額は非公表。ローム浜松では、シリコン基板による従来のLSI生産もそのまま継続する。
ロームはGaNデバイスで後発。今後、サーバー用電源や次世代基地局向けのほか「高効率・小型化・軽量化が求められる電気自動車(EV)向け電源の置き換え」を狙う。
ローム浜松ではGaNデバイスを最適に制御する周辺ICを製造できる。モジュールとしてソリューション提案できるのも強み。将来は生産の多拠点展開や能力拡大を進めトップシェアを狙う。
ロームは同じく機器の小型化・省エネルギー化に寄与する炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスも10年に量産化に成功。26年3月期までの中期経営計画では、GaN、SiCを含むパワー半導体事業を重点分野に据える。
日刊工業新聞2022年2月10日