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フリーの臨床工学技士が医療機器の教育用オンラインサービスを開発するワケ

フリーの臨床工学技士が医療機器の教育用オンラインサービスを開発するワケ

医療機器の教育用オンラインサービスも開発中の大石社長

患者、医療機器、医療スタッフを結ぶ―。Kiwi(キウイ、福岡市中央区)の大石杏衣社長は、福岡県を中心に活動するフリーランスの臨床工学技士。病院での医療機器の管理や教育を支援している。医療機器の教育用オンラインサービスの開発も進行中。目指すのは、時間や場所を問わずに学べて質問できるサービスだ。

現代の医療現場では、診断にも治療にも医療機器は欠かせない。重要性は高まっており、高機能化などに伴い必要な知識は増え、変化もする。大石社長は「情報はアップデートしておいたほうがいい」と話す。機器についての相談にはメーカーや取扱業者も対応するが、患者の状態によって一刻を争う事態になれば現場スタッフの知識だけが頼りだ。

しかし新型コロナウイルス感染症拡大の影響で医療現場には大きな負担がかかり、機器についての教育を十分にできない場合もある。複数人を集めての研修も感染防止のためにできなくなっている。

大石氏は2019年にフリーの臨床工学技士として活動を始め、医療機器管理責任者としての業務などを手がける。支援する病院の多くが、同技師不在の場合も少なくない中小規模だ。支援頻度についても「その病院に合った形でいい」と柔軟に対応。機器の保守点検計画の作成やマニュアル整備だけでも、技師が入ることでプラスになると提案する。

さまざまな現場で機器に関する多くの相談に応じてきた大石氏。その中で機器に関する不安や苦手意識を抱えながらも、日々の業務に追われて深く学ぶ時間が持てない医療スタッフの実情を知る。同じ目的の機器でも機種によって操作に違いがある場合もあり、ベテランでも職場が変われば使う機器について学ぶ必要が生じる。また機器の原理や構造など根本的なことを知っておくことは、不測の事態への対応力にもつながるという。

開発を目指すオンライン教育は、動画も使うことで、臨床に基づいた使い方を分かりやすく学べるシステムにする。正しい使い方にすぐにアクセスできる点もポイントにする。

「現場の声をメーカーや取扱会社に届けたい」との思いもあり、質問や意見を投稿できるようにする計画。集めたデータを医療機器メーカーが、より安全な医療機器の開発に生かすことで安全性の高い機器の普及にも貢献したい考え。個人で利用するだけでなく、医療機関の研修での活用も想定する。「いいコンテンツを作っていきたい」と意気込む。(西部・関広樹)

日刊工業新聞2022年2月10日

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