上昇続く物価、黒田日銀総裁が示した先行き見通し
日銀・1月さくらリポートは全地域で景気判断引き上げ
日銀は1月の地域経済報告(さくらリポート)で、国内全9地域の景気判断を引き上げた。すべての地域の引き上げは2013年10月以来8年3カ月ぶりとなる。個人消費の改善がみられ、半導体などの供給制約も和らいだ。ただ、足元はまん延防止等重点措置が広島県、山口県、沖縄県で適用されるなどコロナ禍は予断を許さず、経済の下押し圧力が再度強まる可能性がある。
日銀は新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」の流行前の期間を中心に、今回の調査を実施した。宿泊や飲食などの個人消費の持ち直しが顕著で、個人消費はさくらリポートの公表を開始した05年4月以降で初めて全地域を引き上げた。
生産は東海、中国、九州・沖縄の3地域を引き上げ。いずれも半導体や自動車部品などの供給制約が緩和された。しかし、引き下げも3地域(北海道、近畿、四国)あり、一部で供給制約が続いていることが背景にある。
企業物価指数の伸び幅が過去最大を記録する中、原材料価格が企業収益の重しになっている。設備投資を引き上げたのは北海道の1地域にとどまり、ほか8地域は据え置いた。原材料価格の上昇と、海上輸送の乱れによる航空機輸送への切り替えに伴う物流コストの増加で、設備投資の更新を先送りする企業もあった。
黒田東彦総裁は物価の先行きについて、12日の日銀支店長会議で「エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していく」と、物価の上昇局面が続くとの見通しを示した。
日刊工業新聞2022年1月13日