子供は何歳からプログラミングを学ぶべきか
「プログラミングの素養があれば、作り手になれるし起業もしやすい」(南場智子ディ・エヌ・エー取締役ファウンダー)
日刊工業新聞2015年06月12日付記事に加筆
ディー・エヌ・エー(DeNA)は昨年、佐賀県武雄市と協力し山内西小学校で1年生40人を対象にプログラミングの授業を8回行った。取締役ファウンダーの南場智子さんは何回も現地に出向いて、涙が出るほど感動したという。武雄市は小学生全員がタブレットを持っていて、ゲームやアニメーションを喜んで作った。
南場さんいわく、ITエンジニアを増やそうとしたら、なるべく多くの子どもたちに触れさせて、親しみを持ってもらうことだという。タブレットを渡しただけでは利用専用になる。アプリを提供することで、使うのも楽しいけど、作ることもできることを教えたかったという。みんな答えが違って自分でシナリオを書くので教育にもいい。最初は南場さんに目も合わせてくれなかった先生も、徐々自分から率先して指導するようになったとか。
―去年の10月から佐賀県武雄市の公立小学校で1年生を対象にプログラミング教育の実証実験を始めましたが。
「社会ではバーチャルの割合が大きくなって、ネットで創作活動ができないと利用者だけにとどまってしまう。プログラミングの素養があれば作り手になれるし起業もしやすい。私は義務教育にすべきだと思いますよ。ソフトウエア技術が国力を左右する時代に、日本はコンピューターサイエンスの人材が全然足りていない。米国は人材ポートフォリオを戦略的に算出して、学部構成まで考えている。日本で人材活用といえば、『女性』とか『外国人』とかの議論になってしまうけど、本当に大事なのは、どういう人材が何年までに何万人必要という発想です」
―最近は娘を理系に進学させたがる親が多いと言われています。
「よいことだと思いますよ。私は米国留学で経済学問というよりは、探求することを学びました。理系は仮説を立ててもっと深く探求しますよね。あとは職業選択に直結する進学を18歳の時にさせてはいけないと思います。勉強が一番できるからとりあえず東大医学部に行って、『そんなに医者になりたくない』という人が結構いたりする。もうちょっと世の中にどんな仕事があるか、視野を広げてから専門教育へ進む方が悲劇は起こらない」
―世界のIT大手企業の経営者はエンジニアが多いです。起業前後で困ったことは。
「一度、プログラミングを学ぼうかな、と考えました。でも守安(功現社長)に相談したら、今からやっても時間の無駄だから、得意なところに集中して引っ張ってほしいと。投資の意思決定はその都度知識を勉強しているし、理系卒じゃないことが不利だと感じません。もともと私は完全に左脳人間で情緒とか苦手。文系卒でも理系的に考える人もいるし、ステレオタイプに区分けしても意味がない。それは『男女』も同じです」