ニュースイッチ

コロナ禍が示した東京一極集中の「限界」、今こそ必要な“本当”の地方創生

コロナ禍は東京一極集中の限界を示した。都内で自宅療養中に病状が悪化しても入院できない医療崩壊が起きた。岸田文雄政権は感染再拡大防止や経済対策に万全を期すとともに、強靱(きょうじん)で均衡のとれた国づくりに向け地方創生を画餅に終わらせてはならない。

一極集中のリスクは、巨大地震や感染症などにもろいことだ。首都直下地震の被害推計855兆円(土木学会)が現実になれば国の存立が危うくなる。

国の地方創生は選挙目当てと思える短期政策が目立ち、東京一極集中の是正にほとんどつながっていない。本来は産業創出や生産性向上をテコに地方経済を活性化し、雇用の受け皿を増やす必要がある。長期的な視点に立った政策の継続性が重要な意味を持つ。

 

地方創生は洋上風力発電やスマート農業、第5世代通信(5G)を生かせる研究開発がけん引役になりそう。本社の地方移転やテレワークの活用により拠点分散を進める企業には、税制優遇などの支援策を総動員すべきだ。コロナ禍で若者の地元志向が高まっているとの調査結果もある。自治体や企業、振興機関は、この変化を味方につけたい。

洋上風力は適地が限られるものの、産業や雇用の創出で大きな潜在力がある。先行する英独では数万人の雇用を生む。地域振興のためには運用・保守などの人材育成や地場の中小製造業も含めた産業クラスターの形成を促す政策が有効だろう。

岸田政権は地方創生を目指す「デジタル田園都市国家構想」で自治体向けに大規模な交付金制度を創設し、デジタルを活用して地域の自主的な取り組みを促進する。新たな国づくりの礎となるか、バラマキで終わるか。その巧拙が日本の明暗を分けるかもしれない。

日刊工業新聞2021年11月22日

編集部のおすすめ