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自動車部品のアルミダイカスト製品、脱炭素の潮流が生む「脅威と好機」

自動車部品のアルミダイカスト製品、脱炭素の潮流が生む「脅威と好機」

ダイカストに使用するアルミニウム地金。環境面での優位性で注目されるアルミダイカスト製品の採用拡大に向けメーカーへの提案力を高める

アーレスティは、エンジンブロックなどのアルミニウムダイカスト製品が主力事業。脱炭素の動きは既存事業にとって脅威だが、自動車のライフサイクルにおける二酸化炭素(CO2)排出量削減に向け、アルミの軽さや省資源化という強みを生かせる機会にもなる。

アルミは精錬に必要なエネルギー量の多さから“電気の缶詰”とも呼ばれる。他方でリサイクル性も高く、サッシや自動車のスクラップから作るアルミ2次合金は、新地金の製造時の約3%のエネルギー量で製造できる。

外販用アルミ2次合金の知見を蓄積する熊谷工場。敷地内の緑の多さも特徴

このことから、軽さと強度の両立が強みだったアルミダイカスト製品が、環境面での優位性でも注目されるようになった。同社は顧客企業による製品の採用拡大を通じ、自動車の製品ライフサイクル全体におけるCO2排出量削減に貢献する方針だ。

自動車部品のアルミダイカスト製品は、電動化による内燃機関の減少で需要が一部減るものの、電気自動車(EV)向け部品などの新分野が加わる。車体の軽量化に向けたアルミ製ボディーの増加にも期待がかかる。

こうした分野では、自動車メーカーなどがダイカスト製品に従来同様の性能を求めるとは限らない。同社の高橋新一専務執行役員は「規格にとらわれず、顧客の求める機能に合った提案を期待している」と語る。

多くの製品は、不純物の許容量を定めた日本産業規格(JIS)「ADC12」などに沿った合金を使う。しかし、不純物の鉄や銅は靱性などの向上に役立つため、自社規格を用いて製品の性能向上に生かす企業が今後増える可能性は大いにある。

同社は地金の性質などに関する知見を生かし、提案力を高める構えだ。熊谷工場(埼玉県熊谷市)で外販用のアルミ2次合金を製造しており、材料の特性や製造方法に関するノウハウを蓄積できる強みを生かす。

熊谷工場の知見はCO2排出量抑制にも役立ちそうだ。アルミ2次合金の使用率向上へ、材料特性の洗い出しにも力を入れる。高橋専務は「難易度は高いがダイカストと再生地金の両方を事業とするからこそ取り組める」と自信を見せる。

日刊工業新聞2021年10月5日

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