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【COP21閉幕】パリ協定にみる企業のチャンスとリスク

196カ国・地域が低炭素技術のマーケット

社説/COP21「パリ協定」 自社事業への影響、長期的に検討を


(日刊工業新聞2015年12月15日 総合4/国際)


 気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は日本時間13日未明に「パリ協定」を採択し、閉幕した。支援を求める途上国と先進国との緊迫した攻防が最後まで続いた。

 薄氷を踏みながらもたどり着いた新協定は、京都議定書にかわる新たな国際枠組みだ。196カ国・地域の全加盟国が参加し、産業革命前に比べ気温上昇を2度Cよりも低く抑える目標を掲げた。1・5度C未満という努力目標も加えた。年1000億ドルを下限とする途上国への資金援助は、法的拘束力を持たない形で決着した。

 国別の目標達成の義務化は見送ったものの、途上国と先進国が同じ枠組みに参加し、長期目標を共有したことは大きな成果だ。これを社会や経済構造を変える歴史的転換点にしたい。企業はパリ協定が動きだす2020年以降の変革を予想し、自社の事業への影響を検討しておくべきだろう。

 パリ協定では、各国に温室効果ガス排出削減の国内対策の実施を義務づけている。世界中のどこの国で事業をする場合でも、この問題と向き合うことになる。

 例えば中国は17年から排出量取引制度を全国規模に拡大する。2省5市で試行中だが、すでに世界最大の排出量取引市場を形成している。他の国でも今後、排出量取引や炭素税を導入するケースが増えるだろう。企業としては、事業展開する国・地域の政策を注視しなければならない。

 また地域性だけでなく、今後のトレンドの変化も企業行動を左右する。パリ協定では目標の引き上げを前提に、5年ごとに進捗(しんちょく)を検証する制度を導入するとした。各国が将来、目標を上方修正する可能性を見込まなければならない。目先だけではなく、厳しい目標に備えた長期計画が必要だ。

 ただ排出削減はエネルギー消費を抑え、コスト削減にもつながる。先手を打った企業ほど、自らの体質を強固にするだろう。
 
 ここ数年、日本の温暖化対策は停滞していた。パリ協定をきっかけに再び取り組みを加速し、世界的に厳しさを増す温暖化対策に備えてもらいたい。
日刊工業新聞2015年12月15日 深層断面、2015年12月15日 総合4/国際面
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
今朝の日刊工業新聞はCOP21・パリ協定に関連する記事を複数、掲載しました。深層断面と社説は対照的で、深層断面は「ビジネスチャンス」、社説は温暖化対策が強化されることへの「リスク」に触れています。どちらともあえて「地球のため」「環境のため」というフレーズを使っていません。社説ではストレートに表現できませんでしたが、パリ協定を「自分のこと」として考えることが重要と思っています。国連で決めた遠い未来の話ですが、自社の事業に置き換えるとビジネスチャンス、リスクも見えてくると思います。

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