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請求書業務の見直し必要も。「電帳法」改正が企業に与える影響とは?

連載/改正・電子帳簿保存法の全容と取り組むべきこと #02

2022年1月に予定されている「電子帳簿保存法(電帳法)」改正により、企業の請求書業務は大きく変わろうとしている。「電子で受け取った請求書は電子で保存しなければならない」という規定の導入によって、従来の請求書の業務フローの見直しや検討を迫られるだろう。企業が直面する課題や、検討すべき事柄の必要性を解説する。

紙と電子の請求書が混在する状況に要注意

改正後の電帳法では、メールなどで受領したPDFファイルなどの電子請求書について、書面に出力し、その書面のみを保存する方法は、税法上認められない。電子請求書は、電子保存が義務化される。これにより、多くの企業では、請求書の業務フローの見直しが迫られるだろう。

それはなぜか。多くの企業は、受領する請求書に「紙」と「電子」が混在しているからだ。

企業に届く請求書の形式には、郵送で送られてくる「紙の請求書」と、メールで受領するPDFファイルや、ウェブサイト上にアップロードされたファイルを指す「電子請求書」の2種類がある。Sansan株式会社が2021年8月にビジネスパーソン1000人を対象として実施した「電子帳簿保存法に関する意識調査」によると、「紙の請求書と、PDFなど電子形式の請求書が混在している」と答えた人が54.7%と半数を超えた。

「電子帳簿保存法に関する意識調査」より

リモートワークの導入で企業が取り扱う様々な書類が電子化され、請求書も電子で発行されるケースが今後多くなると予想される。そして、請求書の形式は発行企業に依存するため、受領企業の一存ではコントロールできない。そのため、紙と電子の請求書が混在する状況は今後も続いていくと思われる。

これまでは、受け取り形式が紙と電子で混在していても、電子は書面に出力し、最終的に書面でのみ保存して一元管理をすることが可能だった。しかし2022年1月以降は、それができない。

紙の請求書はこれまで通り紙のまま保存しても問題ないが、電子で受け取った場合は電子保存する必要がある。つまり「紙での保存」と「電子での保存」の二重管理が前提となってしまう。

管理方法が二重になれば、ミスや混乱が起こる可能性が高いため、新たな業務フローを構築する必要もあるだろう。一元管理をしようとするならば、「電子での保存」をするしかない。

二重管理していくのか、それとも、「紙の請求書をスキャンして電子データ化する」という作業を業務フローに加えて、電子での一元管理を行うのか。企業は自社の業務フローを見つめ直し、選択していく必要があるのだ。

罰則の対象にも

それでは、電帳法に対応しない、またはできないとどうなるのだろうか。今回の改正では、罰則規定が新設された。

これまでは電子化の導入そのもののハードルが高かったために、保存要件を満たしていない場合の罰則は特に規定がなかった。しかし、今回の改正で大幅な規制緩和がなされ、請求書業務の電子化の門戸が広げられたことで、より多くの企業が電子化に踏み切る可能性が高まった。そのため、違反した場合のルールも新たに設けられることになったと考えられる。

主な罰則は、「不正があった場合は重加算税が10%加重となる」「青色申告の取り消し対象となり得る」の2点だ。

紙の請求書をスキャンして保存した電子データや、電子請求書の取引データに万が一「不正」があった場合は、通常35%の重加算税が10%加重され、45%となる。ただし、この「不正」とは、データの改ざんや架空取引など、悪質性のあるケースが想定されているようだ。

もうひとつの「青色申告の承認取り消し」は、悪質なケースでなくても、適切に電子保存できていなければ対象となりうる。要件を満たされずに保存された請求書は「なかったもの」として扱われるため、国税関係書類として認められなくなるのだ。これに関わってくるのは、経理部門に限らない。

もしあなたが電子で受け取った請求書を、書面に印刷した状態で経理に提出するとしよう。電子で受け取った請求書は電子で保存しなければならないのだが、受け取った経理部門の担当者が「紙の請求書」として処理してしまったら……電帳法の要件を満たすとは言えなくなり、罰則対象になる。

「今まで通り」のやり方では、こうしたミスや混乱が起こりやすくなることは確実であり、ひいてはそれが青色申告の取り消しにまで発展する可能性がある。危機感を持つには十分だろう。

一方、国税庁の「一問一答(Q&A)」では、「違反の程度等を総合勘案の上で適用を判断する」と述べられている。このため、要件を満たした電子保存をしていないからといって、一発で取り消しにならない可能性もある。とはいえ、法律で定められている限り、リスクとして認識しておいた方が良い。

電帳法の要件を満たすシステムを利用する、徹底した内部統制を行うなど、各企業で適切な判断が迫られることになるだろう。(次回公開は11月16日)

柴野亮:公認会計士|Sansan株式会社 Bill One Unitプロダクトマーケティングマネジャー。監査法人で勤務後、Sansan株式会社に財務経理として入社。経理実務、資金調達等を担当時、紙の請求書の非効率性に課題をもちBill Oneを起案。現場視点から改正電帳法の啓蒙活動に力を入れている。
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