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冷凍チャーハンの製造業者が倒産に追い込まれた「専売条項」

真秀コールド・フーズ、販路開拓は難航し大型投資が重荷に

真秀コールド・フーズは、2017年3月に完成した奈良県内最大級の冷凍食品工場を所有し、冷凍チャーハンや冷凍おにぎりなどを製造、大手冷凍食品メーカーなどにOEM(相手先ブランド)供給していた。

母体は卸売市場の冷蔵冷凍倉庫を運営する第三セクター。原料調達から製造・出荷まで一貫供給体制を構築することで、競争が厳しい業界に参入できると判断し、総額36億円の協調融資を得て、工場を建設した。

工場は同年4月に稼働したが、その直後に機械装置の不具合が発生。本格生産に入ってもトラブルが続出した。18年12月期の年売上高は約12億円、19年12月期も13億円余りにとどまり、赤字経営から脱却できぬまま、20年3月に民事再生法の適用を申請した。

生産実績に対して過大な投資が倒産の要因であるが、舞台裏を見ると別の要因も見えてくる。それを証明するのが民事再生申立書の「製造委託契約書において、申立人(=真秀コールド・フーズ)がT社以外の会社からの受注をしてはならないこと(専売条項)が規定されていた」という一文だ。事業計画の根幹とも言える営業や販路開拓を、事実上T社がコントロールしていた形だったのだ。また、金融支援を受けるなかで、原価計算が不十分であることも明らかになっていた。

金融支援を取り付け、冷凍食品メーカーや大手外食チェーンとの直接取引拡大など独自路線を歩み始めたが、営業ノウハウもない。販路開拓は難航し、工場稼働率も6割程度と伸び悩み、収益も好転しないまま資金繰りが限界に達した。

こうして見ると、同社は工場を「運営」していたに過ぎないことが分かる。仮に専属工場的な立場だったにしても、創意工夫により売り上げを伸ばし、効率化を図りコスト削減などで利益を追求する「経営」とは程遠い状態だった。責任の所在が不明確で、対応策の検討が後手に回ったことも業績不振から脱却できない一因だったと言えよう。

(帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2020年5月26日

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