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白金フリーの低コストな燃料電池技術は確立できるか

阪神機器など発電システム開発に着手

阪神機器(神戸市西区、山田隆一社長)は、電極触媒に高コストな白金を用いない純水素型燃料電池(FC)による発電システムの開発に着手した。兵庫県立大学、千代田精機(神戸市長田区)と組み、発電能力1キロワットの性能を目指す。非常用バックアップ電源、家庭向けの定置型電源、特装車両の補助電源などへ応用を狙う。低コストなFC技術を確立させ、水素社会の実現に貢献する考えだ。

水素サプライチェーン(供給網)構築後の社会を見据え、直接供給される水素を燃料とする純水素型の製品展開を想定。白金不使用(白金フリー)とすることで、定置型電源としては、製品コストを既存の家庭用燃料電池「エネファーム」と同等程度に抑えられると見込む。

8月に3者で共同研究を始めた。水素を使った発電に使う白金フリー触媒の研究を進める兵庫県立大が、中型放射光施設「ニュースバル」(兵庫県上郡町)を活用し、水素の反応を原子レベルで解析。その知見を阪神機器が開発中の発電システムに生かす。必要な水素ボンベの配管設備は千代田精機が製造する。

阪神機器は現在、国内メーカーからFCスタックを調達し、独自の制御技術で性能を高めた発電システムを開発中で2024年度にもサンプル出荷する計画。この開発実績を踏まえ22年度中にも、兵庫県立大が研究する白金フリーのFCスタックに置き換えて検証を始め、開発を加速する計画だ。3者の共同研究は21年夏、新産業創造研究機構(NIRO)による成長産業育成を目的とする補助金事業に採択された。

FCの電極触媒としては一般的に白金が使われる。ただレアメタル(希少金属)でコストが高く、製品が普及すれば資源の枯渇も懸念される。そのため白金以外の触媒を使ったFCの実用化が期待されている。

日刊工業新聞2021年10月19日

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