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太陽光発電は新世代へ。性能を左右するインバータの驚くべき進化

200メガワット規模の発電所なら7億円超の設備投資を削減できる?

炭化ケイ素は夢のチップか?


 次世代バージョンのインバータには、高強度ながら加工が難しいシリコンカーバイド(SiC;炭化ケイ素)のチップが内包されている。「このSiCチップは、装置の効率性を1~2%も高めてくれる。通常、電力会社は新しいガスタービンの効率性を1~2%向上させるために、数十億ドルも費やしている」とヴラトコヴィチ氏。小型の1メガワットのGE製SiCインバータはすでにドイツで稼働している。

 SiCは世界で最も固いと言われる素材「ダイヤモンド」の最大の特徴を受け継いでおり、さらに全てのコンピューターやスマートフォンに入っているような「シリコン」の特性も持ち合わせている。とはいえ、SiCチップの製造には、クリーンルーム内での300もの異なる工程が求められる。

 「私が開発を始めた当初はまだSiCチップは実用段階になかったが、今やSiCチップは様々な用途に活用される段階にきている」とヴラトコヴィチ氏。

 ヴラトコヴィチ氏はGEのシリコンカーバイドの専門家のひとり。10年前、GEオイル&ガスおよびGEエナジーマネジメントのパワー・エレクトロニクスの設計部門に異動する前にはニューヨークのGEグローバルリサーチでSiCのリサーチプログラムの導入に携わった。

 ラボから製品になるまで、技術が成熟していく様を見てきたのだ。SiCチップは機関車から飛行機、風力タービンまですべてのものの効率性を大幅に向上させることができる。

 GEでは、このように異なる事業部門を跨いだ人材、知識、技術の共有・活用を進める取り組みを「GEストア」と呼ぶ。ここでの共有には製品や事業間での様々な組み合わせがある:ガスタービンがジェットエンジンのノウハウから恩恵を受けたり、医療用スキャナが油田用機械の検査に使われたりといった具合だ。

 「技術は進化を続けている。インバータも、すでに“次世代“に入った」(ヴラトコヴィチ氏)。
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
太陽光発電システムのインバーターを日本ではパワーコンディショナー(パワコン)と呼んでいます。GEのインバーターは1台で4メガを処理できるということなので、日本風に言えば容量は4000kw。ざっくりですがkwはV(ボルト)×A(アンペア)に近いので、Vを1・5倍にすると同じ電流でもkw(VA)が1・5倍になります(GEの新パワコンは1500V×2600A≒4000kw)。普通のパワコンの容量が1000kw。乱暴な結論ですがメガソーラーの能力を4倍引き出すパワコンということになります。技術的にはSiCの採用というよりも、高電圧の高速スイッチングを制御するコントローラーが肝でしょうか。

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