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太陽光発電は新世代へ。性能を左右するインバータの驚くべき進化

200メガワット規模の発電所なら7億円超の設備投資を削減できる?
 太陽光発電が環境に良いことが分かっていても、どんなに頑張ったところで、太陽の光をこれ以上強くすることはできない。そこで、もっと高効率な太陽光発電所を作りたかった米ゼネラル・エレクトリック(GE)のエンジニア・チームは次善の策をとった。

 彼らが用いたのは、インバータと呼ばれる、小さな小屋ほどの大きさの灰色のプラスチック製の箱。「インバータはPV(太陽光発電)パネルから直流を取り込んで、皆さんが使える交流に換えてくれます」と話すのはGEパワーコンバージョン事業のチーフ・エンジニアリング・オフィサーを務めるヴラトコヴィチ氏。

 「インバータシステムは太陽光発電所の資本コストの約20%をも占めるもの。それを効率化できれば、大きな効果を得ることができる」(同氏)。

 彼らは新しいパワー・エレクトロニクスを用いることで、インバータ出力を50%アップさせた。扱える電圧を業界基準と比べて1.5倍(1,000ボルトから1,500ボルトへ)にまで引き上げた。実用規模としては世界最大級の効率性を誇るインバータという。

 このインバータはまた、太陽光発電装置が生み出す4メガワットの電力を処理することも可能(市場で提供されている製品は、通常1メガワット)。つまり、太陽光発電所は従来の4台分のインバータを1台に置き換えられることになる。

 例えば、200メガワット規模の発電所なら600万ドル(約7億2,000万円)近くもの設備投資を削減できることになるという。ヴラトコヴィチ氏は「この新設計は、同じ投資額でより大きな電力送出を可能にしてくれるだけでなく“スケールメリット“ももたらしてくれる。発電所オーナーは、もう発電所のインフラ用に、従来のような幾つものファン、フィルター、コンクリート台やその他の部材を用意する必要がなくなる。発電所の設計をシンプルに変えられる」と話す。

 太陽光発電の未来は明るいはず。業界の研究でも、世界中に設置された太陽光発電装置の出力は今後3年間で200ギガワット以上増えると予想され、北米だけでも11ギガワットの増加が見込まれている(参考:世界438カ所の原子力発電所の正味発電能力は379ギガワット)。

 ヴラトコヴィチ氏とそのチームは当初、今や合併によりGEの一部となったアルストムのオフショアの風力発電所向けにインバータを開発していた。ところが、チームはやがてこの装置は太陽光発電所にとっても有用であることに気付いた。

松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
太陽光発電システムのインバーターを日本ではパワーコンディショナー(パワコン)と呼んでいます。GEのインバーターは1台で4メガを処理できるということなので、日本風に言えば容量は4000kw。ざっくりですがkwはV(ボルト)×A(アンペア)に近いので、Vを1・5倍にすると同じ電流でもkw(VA)が1・5倍になります(GEの新パワコンは1500V×2600A≒4000kw)。普通のパワコンの容量が1000kw。乱暴な結論ですがメガソーラーの能力を4倍引き出すパワコンということになります。技術的にはSiCの採用というよりも、高電圧の高速スイッチングを制御するコントローラーが肝でしょうか。

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