住友林業の米国事業を拡大させた市川晃会長の現場主義

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米国の分譲住宅事業(住友林業公式サイトより)

部署ごとに付加価値追求

「神は現場に宿る。単に漫然と過ごしていては何も感じない。しっかり物事を見つめ、本質を捉える努力が必要だ。(努力をした者だけがたどり着ける)神の声のレベルまで感じられないと、現場の声を聞いたことにはならない」

住友林業の市川晃会長は一貫して現場主義を通してきた。「良い木材をつくるには良い原木が必要。良い原木には良い山が必要。山まで見ないと木の本質はわからない」とし、製品として加工された木材だけでなく、原点となる山までしっかりと確認する重要性を説く。

40代の国際事業部長時代には米国で住宅事業に参入した。住宅は現地の文化や気候によって変わるため、極めて地域性が高い。「日本の住宅を持ち込むのではなく、現地のニーズに合った住宅の販売を心がけた」と強調する。事業を開始した2003年の年間販売は4戸だったが、10年の社長就任時には58戸、20年の社長退任時には9000戸規模まで拡大。日本流に固執するのではなく「一貫して現場の声に耳を傾けた結果」と捉える。

入社時から会社の成長に貢献していきたいという気概を強く持ち、国内外を問わず何事においても全力で取り組んできた。

「どの部署にも現場はある。それぞれの現場で付加価値を付ける努力をすることで、会社は良くなっていく」

住友林業は1691年に創業、別子銅山(愛媛県新居浜市)の銅製錬に必要な薪炭や坑木用に木材調達を担ったのが会社の原点だ。住友の源流でもあるため、現在もグループの中で大きな存在を占める。住友の歴史を背負う一角であることを、市川会長も常に心に留めている。

「取引先や社会の信頼に応えることを大切にする『信用を重んじ確実を旨とし』や『自利利他公私一如』『国土報恩』といった住友の精神を、経営者として会社を成長させる上で軸にしてきた」

現在は光吉敏郎社長を会長として支えるとともに、コニカミノルタの社外取締役や経済同友会の副代表幹事を務める。仕事には厳しいが、誠実で飾らない人柄に社内外で人望が厚く、多くの人から信頼されている。

市川会長の楽しみの一つが住宅の施工現場を回ること。「今は新型コロナウイルス感染症の拡大で現場に行けないのが残念。早くコロナ禍が収束し、現場を回れる日が来てほしい」と、切に願っている。(大城麻木乃)

市川晃氏
【略歴】いちかわ・あきら 78年(昭53)関西学院大経済卒、同年住友林業入社。07年執行役員、08年取締役常務執行役員、10年社長、20年現職。兵庫県出身、66歳。

日刊工業新聞2021年9月14日

キーワード
住友林業 経営

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