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スズキのチーフエンジニアが明かす「ワゴンR」にスライドドア搭載の舞台裏

高橋正志氏
スズキのチーフエンジニアが明かす「ワゴンR」にスライドドア搭載の舞台裏

「ワゴンR」公式サイトより

スライドドア、随所に工夫

1993年発売の軽ワゴン「ワゴンR」は運転や乗り降りのしやすさ、使い勝手の良さで480万人以上の顧客ニーズに応えてきた。ただ軽自動車の新車販売台数の半分以上をスライドドア仕様が占めるようになる中、ワゴンRには同仕様の設定はなかった。軽でスライドドアは、ワゴン系より背が高く家族利用の多いハイトワゴン系車種で設定されるケースが多いが、それでは満たせない個人ニーズがある。そこで開発したのが「ワゴンRスマイル」だ。

軽ワゴンとしては最大級の広い室内、運転しやすいサイズ、安全装備は保ちつつ、利用者の多様な個性を満たせるような魅力やデザインを持つ車として開発した。カラーやアクセサリーの組み合わせで多彩な仕様を可能にした点も特徴だ。

求めやすい価格でスライドドアを実現するため、フロントとスライドドアは軽ハイトワゴン「スペーシア」、リアはワゴンRと共通化した。ワゴンRとスペーシアの中間の位置付けで装備バランスを考慮した。異なる車種を組み合わせたケースはスズキでは珍しい。

ターゲットは子育てを卒業した40歳代後半から50歳代だ。子育て時にミニバンに乗っており、スライドドアの便利さが分かっている層だ。

スライドドアは上下にレールが付いており、その分、開口部の高さが犠牲になる。ハイトワゴンと比べて全高が低い軽ワゴンでの設計は難しい。開口部を子どもや高齢者、男性も含めて乗り降りしやすい高さとし、下のステップを低くして室内高は狭めないよう工夫した。

車高を低くしたのは燃費性能を高めることも狙いだ。リアバンパー付近、フロントとサイドのガラス周辺などの空力を改善し、燃費向上を図った。

安全装備では、狭い道でのすれ違い時の接触防止支援機能をスズキとして初めて採用した。車の左側の映像を表示し、左側に幅寄せしすぎて壁などに接触しないようサポートする。

四角いボディーフォームと、丸目ヘッドランプの組み合わせで、愛着やオシャレさが感じられるようにした。ワゴンRは女性に響く意匠だが、ワゴンRスマイルは男性にも喜ばれるデザインとした。

カラーは、ボディーとルーフでのツートンを用意した。加えてホイールキャップやインストルメントパネルも複数色を設定し、コーディネートで多様なニーズに応えられるようにした。

記者の目/2車種のいいとこ取り

スライドドア採用で軽ワゴンと軽ハイトワゴンのいいとこ取りをした格好になる。ワゴンRのユーザーから同じサイズの車でスライドドアを求める声が多かったとしており、期待は高い。ライバルと見られるダイハツ工業の「ムーヴキャンバス」を追いかける形となる。どこで差別化をアピールし、需要を取り込むのか。販売戦略が注目される。(浜松・市川哲寛)

ワゴンRスマイル(ハイブリッドX、FF)
 全長×全幅×全高=3395×1475×1695mm
 車両重量=870kg
 乗車定員=4人
 エンジン=直列3気筒
 総排気量=657cc
 最高出力=49馬力(エンジン)、2.6馬力(モーター)
 変速機=無段変速機(CVT)
 WLTCモード燃費=1リットル当たり25.1km
 価格=159万2800円(消費税込み)

日刊工業新聞2021年9月2日

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