東芝・富士通・VAIO、パソコン事業統合交渉か?3者それぞれの事情
「VAIOロボット」も!? 新社長が描く成長ストーリー
日刊工業新聞2015年8月20日付
VAIO(バイオ、長野県安曇野市)が事業拡大に動きだす。10月に米国とブラジルでの販売を始め海外市場へ参入するほか、パソコン以外の新規事業の収益比率を、現状の約3割から2017年度に5割に引き上げる。6月に営業部を新設し販路拡大に向けた体制も整えた。収益を安定化させ、再建後の出口戦略を見定める段階に入る。
6月8日付で就任した大田義実社長は19日、会見し「この1年で稼ぐ力をつけ、来年以降に飛躍する」と力を込めた。VAIOはソニーからパソコン事業を切り出し、投資ファンドのもとで14年7月に設立した。
海外展開について、米国では米トランスコスモスと販売代理店契約を結び、10月5日から同社の電子商取引(EC)サイトと米マイクロソフト(MS)のオンラインストアで販売を始める。ブラジルでは同国内の大手パソコンメーカーであるポジティーボ・インフォマティカと提携し、ブランドライセンス事業を行う。
新規事業は、すでに受託生産を手がけるロボットやFA、ゲームなどの分野を想定する。大田社長は「スマートフォンやタブレット端末(携帯型情報端末)の自社開発も視野に、第2、第3の柱を育てたい」と意気込んだ。
大田義実社長インタビュー「まずパソコンで利益」
VAIOは成長をどう描くのか。大田義実社長に再建後の出口戦略などを聞いた。
―トップ就任を受けた理由は。
「これまでに複数の企業の再建やイグジット(投資回収)に携わってきたが、VAIOは日本の製造業であるということと、ソニーで培ってきた技術やブランドがある点から可能性を感じた」
―課題は。
「普通の会社でやるべきことをやっていない部分がある。例えば数字に対するコミットメントの考え方や、商品企画から開発、製造などが一貫していない点などだ。この1年は『自立』が大きなテーマになる」
―1年間の業績と中期計画のポイントは。
「本格的な販売開始はこの春からだが当期利益は黒字になった。3カ年計画では営業利益を重視し、まずパソコン事業で利益が出る体制にする。プラスαで新規事業を成長分野に位置づける。15年度中にめどをつけたい」
―パソコン事業の安定化には法人向けの強化が必須です。
「今は売り上げの半分以上が個人向け。利益が安定的な法人向けはもっと伸ばしたい。金融や設計事務所など、ブランドで指名買いしてくれる業種に特化する。新設した営業部を活用して販路を開拓する」
―出口戦略は。
「いろいろと話はある。大きくは新しい株主を見つけるかIPO(新規株式公開)だが、VAIOを生かしてもらうことが重要。社員の技術も守らないといけない。ブランドが欲しいだけではだめだ」
(聞き手=政年佐貴恵)
元商社マンに託されたVAIOの未来
日刊工業新聞社2015年6月9日付
VAIO(バイオ、長野県安曇野市)は8日、元双日常務執行役員の大田義実氏(62)を社長に招聘(しょうへい)し同日付で就任したと発表した。製品の品ぞろえが整ったことから、営業経験が豊富な大田氏をトップに据え、販売を強化する。VAIOの初代社長として会社を立ち上げた関取高行氏(54)は取締役副会長として営業を支援する。
VAIOは2014年にソニーから分離し、投資ファンドのもとで再スタートを切った。大田氏は双日で機械・金属部門やリテール部門のトップを歴任し、中国総代表を務めた。「製品がそろったことから(営業)現場に強い大田氏を招聘した」(同社)という。関取氏はソニー時代からバイオ事業に関与。VAIOでは高機能パソコンやスマートフォンを発売し業容を広げた。