東芝・富士通・VAIO、パソコン事業統合交渉か?3者それぞれの事情

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左からVAIO・大田社長、東芝・室町社長、富士通・田中社長
*富士通、覚悟の“選択と集中”

日刊工業新聞2015年11月11日付


 クラウドサービスによる価格破壊の波。これに呑みこまれまいと、大手IT各社は「ビジネスモデルの変革」に向けて、大なたを振るい始めた。選択と集中は今に始まったことではないが、これまでとは本気度が違う。

 ITの名門、米ヒューレット・パッカード(HP)は会社分割を余儀なくされ、米デルは米EMCの買収に8兆円を投じる。各社ともここで打って出なければ生き残れないとの覚悟が読み取れる。国内では富士通が動いた。

 「利益成長に向けて質と形を変える」。富士通の田中達也社長は6月の就任以降、初めてとなる経営方針説明会で「ビジネスモデルの変革」を宣言。中長期の”あるべき姿“として「営業利益率10%以上(従来目標比2倍)、海外売上高比率50%以上(現行比約10ポイント増)」などの連結業績指標を打ち出した。

【水平分業に】

 クラウド時代に向けて富士通は過去5年間、自社の製品・サービスを軸とする垂直統合モデルを掲げてきた。しかし、垂直統合では収益責任が見えにくく、「甘えの構造につながる」(田中社長)と判断。”すべてがつながる“モノのインターネット(IoT)時代に向けて、ビジネスモデルを水平分業に変革することを決めた。

 第1弾として、2016年春にもパソコンと携帯電話の両事業をそれぞれ分社する。各事業の人員規模は「パソコンが4ケタ(数千人)。携帯電話は3ケタ(数百人)となる」(同)。

 価格競争の厳しいコモディティー(汎用品)事業の切り出しはHPの分社戦略と方向性は合致する。ただ、HPとは事業規模が異なり、特にパソコン事業で成長シナリオを描くのは難しい。

 富士通のパソコンと携帯電話の両事業の売上高は約7000億円(全社比15%)。15年3月期は黒字だったが、16年3月期は赤字に転落する見通し。

 パソコン事業の苦戦は為替のユーロ安で独現地法人の富士通テクノロジー・ソリューションズ(FTS)の収益が悪化したのが主因。改善策として、ハード主体のFTSをサービス路線にシフトする。

【分社化の行方】

 まず、FTSが独パダボーンの本拠地で行っているパソコンサーバーの開発を閉鎖し、国内拠点(福島県伊達市)に集約する。さらにパソコンとパソコンサーバーの製造拠点(独アウクスブルク)にも改革のメスを入れる。ただ、ドイツでのパソコンサーバーの組み立て製造は継続し、パソコンの開発・製造も日独の2極体制を堅持するとみられる。

 当面の焦点は、分社するパソコンと携帯電話の行方。ライバルのNECは09年に個人向けパソコンの海外事業から完全撤退し、パソコンサーバーの開発と製造もすべて国内に集約した。その後、パソコン事業は黒字ながらも中国のレノボの傘下に入った。

 連結業績目標の達成に向けて、富士通はどのような道を歩むのか。「大切なのは変革のスピード。ここ1、2年間で方向性を示す」と語る田中社長の心中が注目される。

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