密度10倍で電流を生成。京大が開発した熱光発電デバイスがスゴイ
京都大学工学研究科の野田進教授と井上卓也助教、浅野卓准教授ら研究グループは、高温で発光する熱輻射(ふくしゃ)による光源と太陽電池が一体化した熱光発電デバイスを開発した。高密度の光を直接太陽電池へ取り込め、従来の5―10倍の密度で電流を生成できた。外部空間に取り出せる熱輻射の理論限界を超えることにも成功した。太陽光や熱による発電システムの大幅な小型化や高出力化、高効率化につながる。
開発したデバイスは太陽電池に高屈折率の透明基板を採用し、光源側に基板を配置する。室温の太陽電池と、1100ケルビン(約827度C)以上の高温になる光源の間に隙間を設け、光源から太陽電池への熱の移動を防ぐ。
隙間は発生する光の波長の140ナノメートル(ナノは10億分の1)より狭いため、実質的な一体構造となり、外部空間の影響を受けず光源から太陽電池へ光を直接伝達できる。細長い梁(はり)で光源を支える構造により、光源のみに熱を伝えるとともに熱膨張による歪みも緩和する。
これまで外部空間の屈折率の影響で一部の光しか取り出せなかった課題を解消した。今後、デバイス構造の最適化ができれば現在の太陽光発電の20―25%を上回る35%以上のエネルギー変換効率を実現できる計算となる。光源温度の向上や反射鏡の配置による利用できる光の増強、光源と基板の隙間の短縮、太陽電池の抵抗低減などに取り組み、効率化を図る。
日刊工業新聞2021年8月12日