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“世界最強の製造業” GEの勝ち続けるための人材育成と企業文化

90年代から現在までどのように戦略を変えてきたのか
“世界最強の製造業” GEの勝ち続けるための人材育成と企業文化

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 企業においては人材のあり方が文化を創り、企業文化が人材を育む。したがってGEでは、時代や市場環境に合わせて見直す経営戦略とともに、行動規範や評価制度を戦略に合ったものに改められる。

 現在のGEでは、先に挙げた「シンプリフィケーション」が経営のすべての前提にある。その遂行のためにあるべき企業文化を形成するために注力するのは3つ。

 1つ目が、個々の仕事のしかたを変える「FastWorks」。これは顧客視点から社内プロセスを構築し、失敗も活かす柔軟でスピードのあるプロジェクトの進め方であり、製造部門に限らずバックオフィスの社員も取り入れている。

 2つ目が、2014年に改定したGE社員が目指すべき方向を示した「GE Beliefs」。5つの信念の第1にある“Customers Determine Our Success(お客さまに選ばれる存在であり続ける)”が示すとおり、不確実で将来の見通しが立たない今日において成功を収めるには、顧客の考えを熟知し、顧客や業界が望むものをいち早く届けることに尽きる。

 3つ目は、根本から刷新し2016年度中に全部門への展開を完了する予定の「Performance Development(パフォーマンス開発」。これまでは “一年を振り返って評価を決める“ものであった人材管理プロセスを、通年で対話をもち頻繁にフィードバックを繰り返し、“これからをどう形作るかを話し合い、行動と成長を促進する”プロセスへと変更していく。

人は行動とチャレンジを通じて成長する


 GEは、人の成長の80%は経験を通じて培うことのできるものであり、座学や知識のインプットは残る20%で補完するものだと考えている。それゆえ、あえてチャレンジングな機会を与え個々の社員の成長を飛躍させる「ストレッチ・アサインメント(少し背伸びさせる任命)」の文化が根付いている。

 これが根付くのは、全方位のサポートがあるからこそ。実際、先日も日本で働いているある若手女性社員が 「シゴトのご褒美は、さらに大きいチャレンジ」 と話していた。恐れることなく次のチャレンジへと背中を押され、個々が自己の成長の喜びを実感できる風土こそ、GEがGEであるために守っていかなければならないもののひとつなのだ。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ディー・エヌ・エーの南場さんとか採用にこだわる経営者も多いが、このような大企業で人材育成のシステムを企業戦略に応じて柔軟に変えていく会社はそうそうないだろう。一時、サムスンの人材育成システムが注目されたことがあったが、かつて日本の大手製造業の強みでもあった人材教育や人事評価などは、今、弱点となっている部分も多い。

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