脱炭素・デジタル化の潮流、大企業の設備投資意欲が回復基調に
脱炭素化やデジタル化の潮流を受け、大企業による設備投資意欲の回復基調が強まっている。日本政策投資銀行がまとめた大企業の2021年度の国内設備投資計画値は前年度実績比12・6%増の17兆9375億円。同10・2%減だった20年度に比べて大幅増の見通し。製造業が同18・6%増を見込む一方、新型コロナの影響で、非製造業は同9・7%増にとどまる。中堅企業はまだまだ投資意欲が戻らず「K字回復」の構図だ。
資本金10億円以上の1823社が6月22日までに回答した。調査は毎年、計画値から実際の数値が下振れる。21年度実績の予測値では同3・3%増になる。この数値で比較すると、新型コロナ感染拡大前の19年度実績の水準には回復しない。
特に非製造業がコロナ禍からの回復を果たせていないのが調査から浮き彫りになった。業種別では非製造業全体に占める割合の大きい運輸の回復が弱い。卸売り・小売り、サービスも同様だ。非製造業全体は計画値段階で19年度実績を下回る。大和総研の神田慶司シニアエコノミストは「世界全体を見ても、製造業は既にコロナショックを克服した」と指摘した上で「運輸、サービスなど非製造業はデルタ株の流行もあり、厳しい状態が続く」と見通す。
一方、製造業は脱炭素とデジタル化を軸に投資意欲が旺盛。業種別では電気機械は電気自動車(EV)やパワー半導体、データセンター関連、化学はEVの電池材料関連の投資計画が目立ち、製造業全体をけん引する。計画値では製造業全体は19年度実績を上回る。
同時に調査した中堅企業は、資本金1億―10億円未満の3869社が回答し、21年度の国内設備投資計画値は同0・2%減。製造業は同5・4%増だが、非製造業が同4・2%減と弱い。政投銀は「コロナ禍が収束しない中で、中堅企業に多いサービスが下押し要因」(産業調査部)と分析する。
デジタル変革(DX)も急務だ。テレワークなど働き方改革に加え、工場やサービス現場の生産性向上に欠かせない。情報化投資に絞ると、全体で20年度実績比38・9%増となり、このうち製造業は同40・6%増、非製造業は同36・2%増といずれも意欲的な姿勢が見える。インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは「コロナ禍を契機に日本企業がデジタル投資を重視するようになった」と評価しつつ、「米国は一歩先を行く。全ての企業がテクノロジーを駆使している」と説く。日本企業がDXを加速し、世界基準に近づけるかが問われる。