コロナ禍で悪化した三菱重工のキャッシュフロー。どう改善する?
成長分野に投資、稼ぐ力増強
三菱重工業のキャッシュフロー(CF)重視の経営が足踏み状態にある。コロナ禍に伴う収益力の低下などで2021年3月期のフリーCFは2771億円のマイナス。22年3月期はゼロを見込むものの、大幅な改善は見込めないでいる。海外の競合と比べても利益率の高い事業が少ないため、CFを改善し成長分野に投資を振り向け稼ぐ力のある事業創出が求められている。
「利益が出ていたが、フリーCFのマイナスが続いていた」(小沢寿人最高財務責任者〈CFO〉)と、三菱重工は10年程前に資本効率向上のためCFを財務戦略の根幹にすえた。受注系事業を展開していることから顧客との契約条件を見直し、余剰在庫を低減するなどしCFの改善につなげてきた。
目安とした指標はキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC、仕入れから販売による現金回収までに必要な日数)で、20年3月末時点は24日と、17年3月末と比べると4分の1程に短縮。運転資金も減少傾向が続き、資金効率を改善してきた。
しかし、21年3月期に状況が一変。コロナ禍による受注環境の低迷や棚卸し資産の増加などで、それまで4000億円台のプラスで推移していた営業CFは949億円のマイナスに悪化。川崎重工業が346億円、IHIも363億円と両社ともプラスだったのとは対照的だ。
22年3月期は開発凍結を決めた小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット」への多額の投資が解消されるほか自動車部品需要の回復などで収益が改善し、フリーCFはゼロとなる見込みだ。
一方、21年3月期の有利子負債は前期比約3000億円増の約9000億円にまで膨らんだ。負債の返済よりも「今は成長領域への投資に取り組まないといけない」(小沢CFO)と、24年3月期も21年3月期と変わらない規模の9000億円を見込む。三菱重工は逆風が吹く火力発電システムなどのエナジー事業が収益源だ。今後3年間に1800億円の投資計画があり、安定的にCFを生み出していくためにもモビリティーなど成長分野での事業開拓を進める。