台頭する「デジタル子会社」。従来型のIT子会社に押し寄せる変革の波
産業界全体のデジタル変革(DX)が進む中で、企業のIT子会社のパーパス(存在意義)が問われている。注目は「デジタル子会社」の台頭。その一方で、親会社やグループ会社の情報システムの開発・運用を担ってきた従来型のIT子会社に変革の波が押し寄せている。野村総合研究所(NRI)の調査によると、各子会社とも「DXを担う中核になる組織能力を備えることが、成長へのカギ」となることが浮き彫りとなった。
調査の目的は、企業の情報・デジタル子会社の実態を把握して変革の方向性を導くこと。各子会社の業務上の特性に着目し、企業システムの開発・運用などを担う子会社を「従来IT子会社」、デジタル化やDXに特化したサービスを提供する子会社を「デジタル子会社」、その両方を担う子会社を「従来IT・デジタル子会社」と区分して分析した。
有効回答は案内対象全体に対して1割強の47社。このうち、注目のデジタル子会社に分類される企業は5社と少数ながらも「今後の方向性を見る上で示唆に富んでいる」(NRI)としている。
47社の回答によると職種ごとの人材の過不足感について、最も強かったのは「データサイエンティスト(分析官)」で、32%が「大幅に不足」と回答した。次いで「大幅に不足」の回答が高かったのは「AIエンジニア」(19%)、「ITアーキテクト」(17%)。
自社の抱える問題意識について、複数回答形式で尋ねたところ、最も多かったのは「ITを活用した企画力不足」(64%)。次いで多かったのは「新技術への感度が低い(R&D機能が不十分)」(43%)、「育成環境が不十分」(38%)。
これら全体傾向に対して、注目されるのは子会社の業務内容から見た企業特性別の比較だ。10年後の事業規模の拡大について尋ねたところ「大幅拡大」「ある程度拡大」の合計が回答全体の70%を占めた。「大幅拡大」でみると、デジタル子会社、従来IT・デジタル子会社の方が従来型IT子会社よりも多いことが鮮明になった。
NRIは「今後、デジタル化やDXサービスなどを提供できるかどうかが、企業存続や事業規模拡大のカギとなる」と分析。その上で「まずは親会社やグループ会社のDX推進の中核になれる組織能力を備えること」と指摘する。