山下達郎が流れる大規模接種会場でワクチンを打って感じた現場力

  • 0
  • 5

防衛省が運営する東京・大手町の大規模接種センターで新型コロナウイルスのワクチンを接種してきた。以下はあくまで個人的な体験だ。

皮下注射ではなく日本人には馴染みの少ない筋肉注射ということもあり、緊張したのだが、椅子に腰掛けて左肩を出して手を下ろすと、女性の担当医師はあっという間に注射を済ませた。普通の注射より断然痛くなかったのは驚いた。思わず「全然痛くないですね」と聞いたら、「そうですね、普通の注射針より細いからかもしれません」と答えてくれた。

接種後、15分間は施設内にとどまって様子を見る必要がある。接種会場から別室に移動して椅子に腰掛けていると、ポップミュージックが聞こえる。部屋の隅にCDラジカセが置いてあり、山下達郎の曲が流れている。自衛隊の大規模接種会場と山下達郎の組み合わせの妙は、意表を突かれた。音楽を流すというのも、接種者に不安を感じさせず、リラックスさせようという現場の配慮なのだろう。こうしたちょっとした工夫が随所にあり、感心させられる。

会場に入ってから出るまで40分程度。動線と参加者の密を避ける工夫は完璧に計算され、日本の強みである現場力のすごみを感じる。

受付や順番待ちのスペース、問診などの各部屋は若い男性からベテランの女性まで、老若男女問わずさまざまな係員が赤や青、緑などのビブスを着て、10人弱のグループに小分けした接種者たち(このグループも色分けしている)を誘導していた。聞けば日本旅行など大手旅行代理店などの添乗員などが業務にあたっていることも多いとか。どうりで場慣れをしているはずだ。

接種翌朝、打った左肩のあたりに若干の痛みがあったが、毎年接種しているインフルエンザワクチンの腫れと比べても、特段痛いという訳ではない。痛みは2、3日で収まった。

接種後、2日目あたりに猛烈なだるさがあり、仕事をするのもしんどいくらいだったが、そのだるさも翌日には消えていた。それも接種の影響だったのか、単なる体調不良だったのかはよく分からない。接種してから10日ほど経つが、現在まで特に体調の変化はない。

もちろん1回目の接種をしただけで何かが変わる訳ではなく、2回目の接種は7月下旬のため、実際に強い抗体が体内でできるのは8月中旬以降だろう。2回目の接種を終えても、3密を避けたり、マスクを着用したりするなどの新しい行動様式は当面変わることはないはずだ。

さらに、ワクチンの効果はどこまで続くのかまだ不明なことも多く、強力な変異株に対する効果も研究途上だ。ひょっとしたら、季節性のインフルエンザのように毎年ワクチンを接種することになるのかもしれない。

とはいえ、1回目の接種を終えた正直な感想は「ほっとした」だ。自分が感染することより、自分が感染したことで家族や職場の同僚を感染させてしまう恐れがこれで少しは減らせることができるかもしれない。

イスラエルや米国の感染者数の推移を見れば、ワクチンが強力なゲームチェンジャーであることは明白だ。国民の70%以上の接種が完了すれば、100年後の歴史の教科書にも記載されるような、このやっかいな新興感染症のパンデミックに終わりが見えてくる。そう期待したい。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

小川淳
編集局科学技術部
部長

冒頭にも書きましたが、あくまで個人的な経験です。左肩の腫れはすっかり消え、ワクチンを接種した痕跡はありません。献血やインフルエンザワクチンの接種の方が痛かったです。2回目の接種の方が腫れなどは大きいと聞きますが、それも個人差があります。

キーワード

関連する記事はこちら

特集