福島原発の燃料デブリ調査へ、全長約6メートルに伸びる「軽量テレスコピックブーム」とは?【動画あり】
東京工業大学の遠藤玄教授と高橋秀治助教らの研究グループは、東京電力福島第一原子力発電所の燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)調査用に全長約6メートルまで伸びる軽量テレスコピックブームを開発した。高強度化学繊維ロープを巻き取り伸縮させる。先端にデブリ分析装置を取り付け、格納容器から圧力容器内へ運ぶ役割を担う。すでに単体での稼働は確認済みで、今後は分析装置を搭載して動作検証する。
軽量テレスコピックブームはパイプの中にパイプを収め、高強度化学繊維ロープで巻き上げて伸ばす仕組み。4本のパイプを組み合わせて長さ1・8メートルの状態から同6・3メートルにまで伸びる。駆動に3台のモーターが必要だったが、滑車の配置を工夫して張力調整機構を組み込んだ結果、モーター1台で済んだ。
重量は3・7キログラムに抑えた。開発したブームを福島第一原発の格納容器内に据え付ける際、長尺アームで運ぶことが想定され、軽量化する必要があった。
ブームを伸ばした状態での位置ズレは5センチメートル以内に抑えた。ブームの可搬重量は2・5キログラム。耐放射線性光ファイバー利用レーザー誘起プラズマ発光分析法(LIBS)による分析装置を積み、光ファイバーをけん引して圧力容器内まで届ける構想。併せてケーブル格納機も開発した。
デブリ調査する場合はLIBSでの分析だけでなく、カメラや超音波センサーを搭載する方針。ブームの長さが数メートルになると軽いアームや機構を安定させるのが難しかった。日本原子力研究開発機構の「英知を結集した原子力科学技術・人材育成事業」で実施した。
日刊工業新聞2021年6月25日