新業態へ参入を模索する機械系中小、新たな一手で活路は開くか
最終製品を部品提供などで支える機械系中小企業が新業態への参入を模索している。電動化や脱炭素など、サプライチェーン(供給網)を支える中小も変革を迫られる。コロナ禍で受注への影響も受ける中、新たな一手で活路を開く。新規事業は雇用創出や地域活性化貢献の側面も持つ。参入事例を探った。(大阪編集委員・林武志)
西日本屈指の飲食の激戦地、大阪・北新地。三協精器工業(大阪市東淀川区)のグループ会社、士別三協(北海道士別市)は21日に同地で羊肉店を開店する。
三協精器は農業機械や自動車用のバネなどが主力。納入先は大手農機メーカーが多い。赤松賢介社長が「農機を使うことで、我々も大手の顧客になる」と、自ら顧客の理解度を深めるために始めたのが農業関連事業だ。2019年に設立した士別三協には牧場で羊を育成し販売する農業事業部と、羊肉を用いた店舗を運営する飲食事業部がある。
大阪の新店は緊急事態宣言の解除後に開店予定。すでに3店舗を運営する札幌は「ピーク時の半分の売り上げ」(赤松社長)と苦境にある。ただ、自社牧場で育てる羊は現状の200頭から、近く300頭程度にまで増える見通し。大阪への出店で、北海道で地産地消してきた羊の消費拡大につなげる。牧場と飲食店の従業員は地元で雇用し、地域貢献を目指す。
自社ブランドの基礎化粧品や鎮痛クリームなどを20年に発売したのは浪速鉄工(大阪市港区)。同社はつり金具が主力で産業機械など向けに供給する。事業多角化の一環で18年に外部から専門人材を招いて美容事業部を発足し、商品選考してきた。実績のある製造委託先を確保し、美容液などを通信販売で扱う。
同社の堀川忠彦社長は大阪で異業種交流会の代表幹事を務める。参加者の縁を取り持つ間に「自分も全く違う土俵で勝負してみたくなった」(堀川社長)。同交流会での人脈を生かし、化粧品関連事業への参入を決めた。コロナ禍の状況を見極めた上だが、将来の実店舗開設も視野に入れる。
機械の周辺を覆う簡易クリーンルームなどを手がけるエーディエフ(大阪市西淀川区)は、アルミニウムフレームを活用したコロナ禍対策製品を投入した。患者を載せるストレッチャー用のカバーはその一例で、施術中の医師の飛沫(ひまつ)感染を防ぐ。
機械向けなど主力供給先では変革の波が押し寄せる。一方で新規分野の開拓は機械系中小にとっても成長への後押しになっている。