CO2をコンクリートに封じ込める。東大・NEDOの野心的研究の全貌

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CCCを手に持つ野口教授(左)と丸山教授(東大提供)

カルシウムカーボネートコンクリート CO2を吸収・固定

二酸化炭素(CO2)をコンクリートの中に固定し、2050年には年間620万トンのCO2を削減する―。こんな野心的な研究が建築分野で進んでいる。東京大学の野口貴文教授と丸山一平教授らのプロジェクトだ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の元で政府の研究開発事業「ムーンショット型研究開発事業」の一環で推進する。将来、街中のコンクリート建造物がCO2を封じ込める“石棺”になるかもしれない。(小寺貴之)

【カルシウム溶出】

「50年には1億1000万トンのカルシウムカーボネートコンクリート(CCC)を生産し、コンクリート構造物の半分をCCCに置き換えたい」と野口教授は意気込む。CCCのコンセプトはいたってシンプルだ。廃コンクリートからカルシウムを溶かし出し、空気中のCO2を吸収させて炭酸カルシウムの飽和溶液を作る。

この飽和溶液に刺激を与えて、炭酸カルシウムを析出させる。廃コンクリートは砂利などの代わりとして骨材にも活用する。砕いたコンクリートの“ガラ”(がれき類)を、析出した炭酸カルシウムで固めてコンクリートにする。

研究室では模擬的にセメントペーストを骨材とし、石灰岩とCO2ガスで硬化体を作製した。硬化体の圧縮強度は8メガパスカル(メガは100万)。

骨材に対して8%の炭酸カルシウムが析出していた。つまり1立方メートルのCCCには124キログラムのCO2が固定できる計算だ。このCCCは製造工程で1立方メートル当たり51キログラムのCO2が発生すると想定される。固定分から製造分を差し引きすると73キログラムのCO2を削減可能だ。

CCCの試験硬化体。セメントペースト(左)と珪砂(中)を骨材にした(東大提供)

対して現行の生コンクリートは1立方メートル当たり257キログラム、プレキャスト式だと385キログラムのCO2が排出される。つまり現行法からCCCへの置き換えでは、単純計算で320キロ―460キログラムのCO2削減になる計算だ。野口教授は、「コンクリートは廃棄に処理費用がかかる。我々の研究はこの廃コンクリートと空気中のCO2が原料になる。どこでも生産できる地産地消の資源になる」と強調する。

課題は強度だ。現在は8メガパスカル。これを23年までに12メガパスカルへ引き上げる。30年には30メガパスカルが目標だ。これで通常のコンクリートとの置き換えが可能になる。この成果を基に、実際に低層のCCC建築物を建てる計画だ。

【材料強度4倍に】

CCC内部を電子顕微鏡で観察すると針状晶ができていた。針状晶は強度低下の一因という報告もあるが、丸山教授は「針状晶が悪いわけではない。表面積が大きく、摩擦力を上げる効果もある。非晶質と針状晶など全体のバランスで強度が決まる」と説明。製造条件を最適化して材料強度を4倍に高める。

普及に向けてカギとなるのが、炭酸カルシウム飽和溶液を安く作る技術だ。ただ、廃コンクリートを水に漬けて空気を吹き込むだけで、本当にカルシウムを溶出できるのか。

丸山教授は「現行のコンクリート内部には未反応なセメントが残っている。これを溶出させることは、そう難しくない」と説明する。製造プロセスは太平洋セメントなどと開発を進める。挑戦的な研究だが、実現すればコンクリートは最も身近なCO2固定法の一つになる。

日刊工業新聞2021年5月31日

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