ライフサイエンス分野で進むAI活用、産学連携で競争力向上へ

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ライフサイエンス分野での人工知能(AI)活用が進む。4月、ライフサイエンス業界とIT業界のマッチングを担うライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC、大阪市北区)が法人化した。産学が一体となり、製薬、化学、食品、医療といった分野のAI技術開発に加え、人材育成やデータ共有基盤の構築を目指す。(大阪・中野恵美子)

モデル導入、投資判断・人材確保が壁

LINCにはライフサイエンス関連企業、AIを開発するIT企業、大学や研究機関など約120の企業・団体が参画し、医薬品開発の課題や現場ニーズに応えるAI技術の開発を進めてきた。京都大学大学院医学研究科や都市活力研究所などに事務局を置き、2016年11月に発足した。

これまで約30プロジェクトが立ち上がり、20以上のAIシステムの原型が完成した。うち5種類が製品化にこぎつけた。その中には論文情報に基づき、産学官連携のパートナーとなる有望な研究者を探索できる基盤や、膨大な量の原子や分子の動きを自動的に予測するサービスなどが含まれる。報告会やポスターセッションの開催を通じて成果を発信してきた。

京大院医学研究科教授の奥野恭史LINC代表は「広範囲にわたるAI開発の技術は海外に負けないレベルだ」と胸を張る。一方、開発したAIモデルを各社に落とし込む際、社内での投資判断や人材確保が壁となる。

また社内データにとどまらず、病院や行政で管理されているデータの活用が課題だ。個人情報への配慮のほか、病院ごとに形式の異なる電子カルテが用いられるなど活用は容易ではない。

50テーマから有望プロ絞る

LINCは法人化を機に、こうした課題を乗り越える施策を打つ。まずは、各社で勉強会を通じてAI技術開発の能力を高める。またライフサイエンスとAIの両方に精通した人材育成、経営層や管理職への教育を充実させる。さらに、社会制度や産業基盤づくりにも視野を広げ、データ共有や共通のAI基盤構築に取り組む。現在、AI化する約50テーマが挙がっており、順次有望なプロジェクトを絞り込む

医薬品開発の成功確率は2万―3万分の1以下とされ、開発期間は10年以上にのぼる。AIの活用により、医薬品の候補となる物質の探索から既存薬の適応症拡大、新薬候補化合物の最適化、臨床試験、治療に至るまでの一連の流れを効率化できる。奥野代表は「業界全体の産業競争力を高める上で、AI活用のための基盤開発は意義が大きい」と力を込める。

日刊工業新聞2021年6月17日

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