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航空機開発の高速化につなげるJAXAの「機械学習」活用

航空機開発の高速化につなげるJAXAの「機械学習」活用

写真はイメージ

航空分野においても機械学習によるデータ活用が試みられている。それにより開発コストの大幅な削減や、実験や数値解析のデータからより深い洞察を得ることなどが期待されている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でもさまざまな機械学習関連の研究を進めているが、ここでは二つの研究例を簡単に紹介したい。

航空機開発の高速化・低コスト化を目指し、機械学習を利用した予測モデルの構築による解析の高速化が盛んに研究されている。例えばJAXAでは、バフェットと呼ばれる流体現象の予測手法を研究している。

バフェットは航空機が安定飛行できる速度などを律速する重要な現象だが、設計段階でその発生を予測するには大規模な数値解析や風洞実験を必要とする。そこでJAXAでは、短時間で計算可能な小規模の数値解析のみでバフェット現象の予測を可能とする解析ツールを開発している。

【有益情報抽出】

これは、バフェットの発生と小規模な数値解析の結果の間に対応関係があることによる。すなわち、それらの間の関係を機械学習でモデル化することにより、高速なバフェット予測を目指している。

また、得られた予測モデルの性質を詳しく解析することで、バフェット現象そのものの物理的性質への知見も深まると考えている。得られた知見はより効果的にバフェット現象の発生を防ぐ航空機の開発へ役立つことが期待される。

機械学習の時代が到来したことにより、実験や数値解析のデータからより有益な情報を抽出することの重要性も再認識されてきた。特に航空機周りの流れ場は時間変化も空間分布も複雑に振る舞うため、データから有益な情報を知識として抽出することは容易ではない。

そのような背景のもと、JAXAでは流体データの解釈を容易にする手段の一つとして、モード分解に基づくデータ解析ソフトFBasisを開発している。FBasisでは時系列データに内在する支配現象の空間分布と時間変化を抽出することができる。

【支配現象】

例えば、多くの航空機の主翼形状である後退翼周りの流れ場解析では、よく知られるバフェット現象だけでなく、特徴的な空間パターンが翼幅方向に伝播する現象も支配現象として抽出された。後者の現象はこれまでの研究でも知られていたものの、本解析では、その3次元的な空間分布と動的な振る舞いを初めてモードとして抽出することに成功した。

また、本ツールは航空分野以外のデータにも利用できる。ファンの騒音源特定などの用途では、民間でも活用の試みがすでに始まっている。

後退翼周りの流れ場から支配現象の流体構造を抽出した例
◇航空技術部門 数値解析技術研究ユニット 研究開発員 大道勇哉
研究開発員。専門は圧縮性流体の数値シミュレーション、データ解析、モデリング技術。データ解析ツールFBasisを開発。複雑に時空間変化する流体現象の本質を理解し、モデル化する技術に興味がある。
日刊工業新聞2021年3月29日

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