「転職なき移住」に補助金交付へ、和歌山県の狙い
和歌山県は大都市圏の企業に勤めたまま県内に移住する「転職なき移住」を認める企業に対して立地企業に準じた補助金を交付する新制度の検討に着手した。テレワークを推進して社員が自然豊かな生活環境に身を置きながら働ける体制を作ろうとする企業を支援。現在の収入やキャリアを維持したままやってくる移住者を受け入れることで、地域活性化につなげる。詳細設計を急ぎ、2021年度内にも実現を目指す。
県によると、オフィス新設などを伴わない県外企業に対する立地関連補助金の交付は他の都道府県でも例がないという。県庁内で補助金の要件や規模などを検討中で、対象地域についても、首都圏を念頭に置くものの、京阪神ほかを対象とするかは今後詰める。
新型コロナウイルス感染症の拡大で生じた働き方や価値観の劇的な変化を追い風に、自然豊かで安全・快適な生活環境を訴求し、和歌山県への移住を促す。
従来型の移住は移住先で所得やキャリアなど条件に合う仕事を探すことが困難だった。転職なき移住ならば課題も解決できる。
県はこれまでも本社機能の一部移転を行う企業に、100人以上の転入雇用が実現した場合に最大10億円の奨励金を用意するなど積極的な誘致策を打ち出してきた。
転職なき移住を促進して、移住者の持つ知見やネットワークを生かすことで、企業立地にも匹敵する地域活性化の効果を期待できると考える。
コロナ禍を機に、企業の地方移転や移住を促すことで、定住人口の拡大を狙う自治体は数多い。全国各地域では今後、コロナ後をにらんで誘致競争の熾烈(しれつ)化も想定され、受け入れ環境の魅力とともに支援策の充実も問われることになりそうだ。
日刊工業新聞2021年6月3日