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調達・購買部門はモノを買うこと以上の意味を持ち始めている

文= 坂口孝則(調達・購買コンサルタント)「お金というメディアを使ってメッセージを伝えよう」

「CPO」の有無で企業のコスト感度が試される


 世界的な不況の現在とは、すなわち調達・購買の時代でもあります。調達・購買力の弱さによる相対的なコスト高は、好景気ならば売上高の伸びによってなおざりにされがちですが、しかし、売上高が落ち込む一方の不景気では、そうはいっていられません。対外支出のよりいっそうの厳格な管理が、生き残りの条件といえるほどまでになっています。

 日本ではまだメジャーではないものの、CPO(Chief Procurement Officer~調達担当役員)を設置する企業が出てきました。企業全体の外部支出の価格が適切であることを保証し、株主への説明責任を果たし、企業価値を高めようとするものです。高利益・優良企業が多く設置しています。CPOを設置しているかどうかが、企業のコスト感度を測る一つのキーとなります。

お金は人と人とをつなぐ


 「お金を使う社員」として調達・購買部門を説明するところから、当コラムを書き起こしました。お金とは人と人をつなぐ「媒介」物です。では、「媒介=メディア」とは何か。

 それは、社会学者のマーシャル・マクルーハンの言葉を借りるならば、「メッセージ」です。「自社は、外部に支払う金額はこう査定する」「自社は、このようなサプライヤと将来にわたって真剣に付きあう」「自社は、サプライヤにこのような業務と依頼したい」……。「お金を使う社員」としての調達・購買部門とは、お金というメディアを用いて、社内外に自社の理念や意思をメッセージとして伝播させ、社内外を変えていく存在だといえます。

 「いまこそ注目すべき製造業の調達・購買業務」―そう、調達・購買は、「モノを買う」こと以上の意味を持ち始めているのです。
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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ニュースイッチ・ファシリテーター、坂口さんらしいウィットに富んだ記事。でも内容はいろいろと考えさせられ示唆に富む。以前はコンドームのような存在だったかもしれないが、最近は調達担当役員で偉くなる人も多い、特に自動車メーカーなどは。今の日産のCOOの西川氏は長く調達担当だった。10年前ぐらいまではあまり調達担当役員がオフィシャルな取材を受けることはなかったが、最近は結構インタビューにも登場している印象。 もっと最新トレンドを知りたい方は、坂口さんの「新刊」で。

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