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フェムテックで異彩を放つ、専門医への相談サービス「産婦人科オンライン」誕生秘話

フェムテックで異彩を放つ、専門医への相談サービス「産婦人科オンライン」誕生秘話

Kids Publicの重見代表


Kids Publicは、女性特有の心や体の悩みに関するオンラインによる相談サービス「産婦人科オンライン」を展開する。現役の産婦人科医師らが、起業・運営し、妊娠期から出産期を中心に悩める女性の相談に直接応じており、フェムテック業界でも異彩を放つ。そのビジネスモデルの秘訣をひもといていく。

まず、サービスを始めたきっかけは何だったのか。

Kids Public産婦人科オンラインの重見大介代表は、こう語る。

「産後うつは、出産した母親の約7ー10人に1人の割合で発生(厚生科学研究「産後うつ病の実態調査ならびに予防的介入のためのスタッフの教育研修活動」(平成13,14年度))しており、社会復帰できない母親もいる。辛く孤立した母親は必ずしも病院にはいかない。医師が病院で待っているだけでは母親の心と体の健康は守れないと感じた」とし、誰にも相談できない女性の実態に直面したことがビジネスの根底にあるという。

また、知ることで防げるトラブルが防げていなかったり、妊娠・授乳期の不適切な情報がインターネット上に氾濫したりといった状況もある。知っておくべき正しい情報が届いていないのが実情だ。こうした妊産婦の課題に着目し、一つの解決策として、産婦人科オンラインを立ち上げた。現在では、妊産中や産後の女性に限らず、女性の健康全てを対象にサービスを提供している。

独自サービスを支える5つの強み

高い専門性など5つの強みが競争力の源泉

産婦人科オンラインサービス(遠隔健康医療相談サービス)が他社と一線を画すのはどういった点なのか。

重見代表は、「5つの強みがある。一番には、高い専門性が挙げられる。産婦人科医や助産師といった専門家が、必ず対応し、しかも対応の質が高い」とし、高い専門性が競争力の源泉と語る。

現役の産婦人科医師や助産師ら合計70人が、オンラインを通じた健康医療相談にのる。リアルタイムで、医学的情報の提供や、一般的な受診勧奨を伝える。事前予約制で、平日18時から22時までの夜間に相談を実施している。医師の時間を10分間確保できるので、他のユーザーを気にすることなく相談できる。相談者はメッセージチャットや動画通話など、ツールを選ぶことも可能だ。合わせて、予約なしで24時間いつでもメッセージを受け付け、24時間以内に医師や助産師が回答するサービスも展開している。

また、専用カルテを使い、毎回の相談内容を記録・保管することで、継続的なアドバイスが可能だ。同社の小児科オンラインと連携して、妊娠から子育て期までの切れ目ない支援も整えている。女性特有の疾患や月経随伴症状、不妊治療など幅広い分野での相談にも応じている。

こうした一つひとつのサービスが実にきめ細かい。現場を実際にみてきた現役の医師ならではの配慮が感じられる。

医師を集めることに腐心

産婦人科オンラインを立ちあげる際、苦労したことは何なのだろうか。

重見代表は、「どうやって理念に賛同してくれる専門家を集めるかが(起業する際の)最も重要なポイントになると考えていた。それが一番苦労した点でもある」とし、専門家集めの難しさを強調する。

専門家集めには苦労したが、妊娠・出産などの理由で仕事を離れている女性医師でも、オンライン健康相談であれば、働きやすく、賛同を得ることができた。

また、同社は、直接個人と契約するのではなく、主に企業や自治体と契約して、その所属する個人に対してサービスを提供する形態をとっている。どういった契約形態にするかで試行錯誤した結果だ。日本は国民皆保険のため、安全安心に安い治療が受けられる体制となっている。個人が医療にお金を払うという意識が(欧米などと比べて)低い傾向にある。そのため、個人から医療相談でお金をもらうことは難しいと考えて、法人契約の形態にした。

起業当初は、女性の悩みに関する企業の意識は低く、なかなか契約には至らなかった。臨床現場での課題を説明すると、現役の医師がつくったサービスということで、徐々に理解が得られるようになり、社内の福利厚生面での一つのカテゴリーとして、採用されるようになってきた。現在、一般企業や自治体など約50法人にサービスを提供している。法人の先にいる個人を見据えて、法人の福利厚生やニーズをとらえて、訴求していくビジネスモデルが功を奏した格好だ。


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