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近藤那央のロボット解体新書! モータ、角度センサメーカー 多摩川精機(前編)

海底から宇宙まで!モノを動かすモータの中身に迫る
近藤那央のロボット解体新書! モータ、角度センサメーカー 多摩川精機(前編)

写真右より、新井昭文代表取締役社長、近藤那央、開発営業本部 FAプロジェクト技術担当 西田茂部長


ACとDCの違いとは?


近藤「こちらに伺う前にホームページを拝見して『ACモータ』を扱っていると知ったのですが、私が普段使っているモータとは違うので詳しく教えてほしいです」
新井社長「ラジコンやミニ四駆にはDCモータが主に使われていますね。理科の実験などで使っているものもそうです」
近藤「私の製作したロボットにもDCモータを使っています」
新井社長「DCモータには中にブラシが入っていて、電流の向きが変わることで回転するんですよ。ところがブラシによる機械的接触があるためどうしても寿命などの問題が発生してしまいます。そこでブラシをなくしてしまおう、ということになり、このブラシのないDCサーボモータを『ACサーボモータ』と呼んでいるんです」
近藤「なるほど」

新井社長「ブラシをなくしたことにより、モータがどのくらい回っているかを測る必要があるため、ACサーボモータには一般的に角度センサがついています。そこでモータの回る部分(ロータ)と止まっている部分(ステータ)との角度を検出します。DCモータには、ステータは磁石がついていて中のロータの電流をブラシで切り替えて回転させていました。ACモータは逆で、ロータが磁石で周りのステータの電流を切り替えて回転させています。
西田部長「簡単に言うと、周りの巻線に流す電流を順番に切り替えロータのN極とS極を順に引き付けたり放したりすることで回転させています」

モータとともに必要な角度センサ


近藤「電流を切り替える必要があるとなると、モータのほかに機器が必要ですね」
新井「回転する部分の後ろに角度を測るセンサがあり、電子回路が組み込まれたドライバという機器をつなぎます。交流電流をまず直流に変えて、切り替えるための信号をつくり、モータに送っています」
西田部長「切り替えるときに、ロータが今どの位置にあるのかを検出する必要があります。角度センサが位置を検出し、その信号をドライバに送って、ドライバは必要な回転をさせるためどのコイルにどのくらいの電流を送るかを決めているのです」
新井社長「この角度センサの分解能(※3)を上げることによって、スピードを測ることができ、さらに細かく見ることで、加速度も測ることができます」
新井社長「DCモータはこういった機器が必要ないシンプルな構造なので、おもちゃなどによく使われます。でもブラシから火花が出てそれがノイズになったり、壊れやすい。産業用ロボットでは止まってしまっては困りますよね。だからブラシレスの方を使用しているんです」
近藤「そういうことなんですね」

西田部長「産業用ロボットでは横にボックスがあり、ドライバはそこに入っています。ロボットの各関節についたモータの動きを制御することで、さまざまな動きを実現しているんです」
新井社長「ドライバの上位には人間の脳にあたるコントローラという機器があり、その計算に従ってドライバがおのおののモータに指示を送り、ロボットの速さ、角度、動く距離を制御しています。この連携によって初めて複雑な動きが実現できるんです」

(注)
※1 2027年にはリニアが開通してアクセスが良くなる予定
※2 6軸ロボット(垂直多関節型)。関節ごとにモータがついている
※3 測定機器が判別できる最小の差。
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
多摩川精機は地元に航空産業を興そうとさまざまな取り組みをしています。自社の強みを生かしながら新たな分野へと積極的に進出していく姿勢を見習いたいものです。

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