高度な「モノづくり」を次世代に伝承、非鉄メーカー“成長の担い手”をどう育成?

  • 0
  • 0
技能伝承の体系的な運営を行う「ものづくり学園」。人材に磨きをかけ高収益の事業基盤を構築する(UACJ提供)

非鉄金属大手各社が企業の成長を支える人材育成を積極化している。従業員一人ひとりの意識改革や能力向上を図るため、新規教育制度の制定や豊富な研修プログラムなどの各種支援を推進。教育メニューは、製錬やモノづくりの技術伝承、技能鉱山エンジニアの育成、ESG(環境・社会・企業統治)人材の育成などさまざまだ。長い歴史の中で培ってきた高度な「モノづくり」を次世代に伝承、仕事の知識やスキルを身に付けさせるだけでなく、業務を通じて社会に新たな付加価値を提供できる“人財”の成長を促す。(取材・山下絵梨)

UACJ ものづくり学園/体系的に技術伝承 全職場で「現場力」底上げ

UACJは、技能伝承の体系的な運営を目的とした「ものづくり学園」の活動を強化し、対象部門を拡大する。ものづくり学園は、各拠点で実施してきたモノづくり技術の伝承の仕組みを相互に強化する活動だ。従来は主にUACJグループ内の生産現場に携わる人材の育成を担ってきたが今後は活動対象をスタッフ部門にも拡大。全ての職場で社員が「ものづくり」に誇りを持てる組織作りを進める。各事業部門・各拠点で継続的に人材に磨きをかけることで、高収益を生み出せる事業基盤を構築する。

2021年度は、自主保全活動を中心に各事業部門・各拠点で社員が自律的に設定した活動を進める。現場のエンジニアなどを主軸としながらも、全ての職場を「現場」ととらえ、活動対象を広げる。長年培ってきた同社の「ものづくり」の精神や技能、ノウハウを体系的に継承できる仕組みを整備することで、「現場力」を高める。

ものづくり学園は、04年に板事業の技能伝承のために名古屋製造所(名古屋市港区)で発足した「製板技塾」がルーツ。その後、板事業の各製造所に広がり、「三国板技塾」(福井製造所内)、「深谷板技塾」(深谷製造所内)などが誕生。同様の目的で板事業以外の「押出技塾」や「保全道場」など教育の場が生まれた。

しかし、国内外でグループ会社が増加する中で、全社で同一水準での技能・技術伝承が組織化され、永続する仕組みが必要となった。そこで19年、「顧客目線で競争力のあるものづくりができる会社」の考えの下、ものづくり学園を始動。グループ全体へ横展開を始めた。

同事業の責任者は「『ものづくりは人づくり』が合言葉。活動を通してUACJしか作ることができない製品を作るという『グループのものづくりのありたい姿』を実現できる」と力を込める。

住友鉱山 採鉱スクール/次世代エンジニア 自社鉱山で育てる

住友金属鉱山は、鉱山エンジニアを育成する制度「マイニングスクール」に取り組んでいる。鉱山運営には、高度な専門知識と経験を備えた技術者が不可欠。鉱山開発・運営を行う資源事業本部では探査や採鉱、選鉱という職種の大学卒新入社員を、グループの重要事業拠点である菱刈鉱山(鹿児島県伊佐市)と新居浜研究所(愛媛県新居浜市)に配属。探鉱や選鉱に関する専門技術と鉱山操業全般技術の基礎をオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)で習得させている。

鉱山エンジニアを育成する「マイニングスクール」。菱刈鉱山(鹿児島県)で操業の基礎を学ぶ(住友鉱山提供)

同スクールは、実際に操業中の自社鉱山に入って技術を習得できることが大きな特徴だ。現在、国内で商業ベースの大規模操業が行われている金鉱山は菱刈鉱山のみ。同鉱山は次世代のエンジニアを育成し、高度な技術を継承するトレーニングの場としても重要な役割を担っている。

一方、新居浜研究所では新たな選鉱技術の開発にも取り組んでおり、ラボと中規模プラントでの試験研究を通じて鉱山の操業改善につながる技術を学ぶ。

スクール卒業後は、既存の海外鉱山や新規プロジェクトの発掘・開発など世界中の拠点に配属される。鉱山権益に出資するだけではなく、人材派遣や技術協力などを通じて鉱山の安定操業や操業改善に貢献することで、パートナーからの高い信頼につながっている。

資源事業本部副本部長の佐藤涼一執行役員は「非鉄金属は今後さらに需要が増す一方、新規鉱山は高地化、深部化などにより開発・操業の難易度が上がっている」と指摘、「菱刈鉱山を若手育成の場だけでなく、今後は鉱山技術養成のためのマイニングスクールとしても活用していく」と話す。受講者からのフィードバックを基に今後も現場のニーズにあった内容にすべく検討している。

JX金属 DNA研修/使命と歴史学ぶ ESGの視点磨く

JX金属は、独自の「データサイエンティスト養成プログラム」など、多様な人材教育制度を用意。中でも、企業の社会的責任や歴史について理解を深める「DNA研修」は特徴的な取り組みの一つだ。

この研修の目的は、単なるスキルアップだけに留まらない。社会と向き合い、社会のために、という姿勢や気概を醸成し、物事を成し遂げるESG人材の育成にある。

DNA研修は社会のために力を尽くすESG人材を育成(JX金属提供)

同社の歴史は、1905年に開業した日立鉱山(茨城県日立市)が始まりだ。製錬で発生する煙害問題の解決を図る中で、地域社会とともに発展する姿勢や従業員が安心して働ける職場づくりに取り組んだ。時代を先取りした考え方は、今も同社のDNAとして引き継がれている。

研修は入社4年目の大卒・大学院卒社員全員が対象。「資源に源流を持ち地球環境や地域社会に対して直接責任を担う一員としての自覚」を持つとともに、自らの価値観と重ね合わせ、ESG経営を担う中核人材を育てる。21年度は対象年度を見直して実施する予定だ。

同社は2040年の長期ビジョンで、先端素材や高付加価値製品・技術を提供する「技術立脚型企業への転身」を掲げている。この実現には「コアとなる人材の確保・育成と組織風土の改革が必須」(同社)だ。人材の力で持続可能な社会の実現に貢献していく。

日刊工業新聞2021年4月29日

キーワード
非鉄

関連する記事はこちら

特集