生産こそラグジュアリー!ウォンテッドリー・仲暁子の「卓見異見」

義務化した消費、さようなら

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フェイスブックジャパンの立ち上げに関わったことが起業のきっかけに
 生産者の時代が来ている。ひと昔前、モノの生産には大資本が必要だった。なぜなら、モノを個人が購入可能な価格まで落とすには大量生産が必要で、そのためにはまとまった額のお金が必要だったからだ。「生産」には「表現活動」も入る。多くの人に何かを伝える行為もまた、資本がいった。けれどもブログやTwitter(ツイッター)、ソーシャルメディア、YouTube(ユーチューブ)などが登場して、自己表現という武器は個人の手に平等に行き渡るようになった。
 
 そこに、プロダクトや物理的な「モノ」も加わろうとしている。今、シェアリングエコノミーが発達し、車もオフィスもパソコンもサーバーも全部レンタルできる時代、何かを作る行為における初期投資は著しく低くなった。また、テクノロジーや生産性の向上によって人々の余暇は今後ますます増える。余暇が増えると、人は何か考えたり作ったりする時間をとれる。これまでは「消費」そのものがラグジュアリーの時代だったが、これからは誰もが「生産」をラグジュアリーとして体験できる時代がくる。それも、自分だけが「消費」する自己満足の生産(言い換えるならば「創造」「創作」)ではなく、何百人、多ければ何万人、何百万人にも利用してもらえるサービスやアプリも簡単に作れるし、生産できる時代になっている。
 
【「こだわり」が競争生む】
 誰もが生産者になるということは、それだけ消費者もオプションが増えるということだ。利益度外視で、本当にいいものを作ろうというプレーヤーが増え、より競争は激しくなる。これまでは既得権益化していた産業も、そういったクリエーティブでイノベーティブなプレーヤーにどんどん崩され始めている。例えば、米国のタクシー業界はUber(ウーバー)に、ホテル業界はAirbnb(エアビーアンドビー)を脅威に感じている。

 ディスラプト(破壊)できるということは、最終的にそれがビジネスにもなるということだ。1億総生産者時代には、趣味と仕事という境界が溶けてなくなる。最近話題のブロガーも、YouTuber(ユーチューバー)も、皆趣味としての表現者が仕事につながっている。アプリからの収入で食っているエンジニアも、趣味が転じて仕事になっている。消費には、正直、皆飽々しているのではないか。消費は、義務化しているといってもいい。例えば服でいうと、皆が来ている服をチェックして、義務のように買いそろえる。がしかし、どこそこの服がカッコイイという時代は終わり、自分だけの「語れるストーリー」がある方が誇らしいし、周りも一目置いてくれる。自分だけの「こだわりがある」みたいに受け取られて、大資本がお決まりのパターンで提供したものをただおとなしく消費するよりもワクワクする。これは服以外にも、食やインテリア、さまざまなものにもいえることだ。
 
【1億総問題解決の時代】
 9時−5時で仕事をしてアフターファイブは習い事、エステ、みたいな価値観は、きっと古くなる。アフターファイブは、周りの人が使ってくれるものを作ってみたり、企画したりする、1億総問題解決時代に入っているともいえる。しかもそれが、英語圏では国境を越えて起きている。日本だけ置いてきぼりになる可能性は高いが、特に英語圏で生産されるものは、あっという間に英語圏に広まり、生産者の生活を支える。私たちのような新興企業は海外の仕事効率化ツールをよく利用するが、ソースコードの管理ツールだったりコミュニケーション・ツールは、一つの国内ではマーケットがそこまで大きくなかったとしても、世界に目を向ければ何万人もユーザーがいて、十分にビジネスとして成立する。

 誰もがいつでもポケットにコンピューターを入れている時代がスマホの到来とともに訪れようとしているが、皆がインターネットによってつながることによって、それぞれがラグジュアリーとして生産し、その延長でスモールビジネスも興し、仕事と趣味の境界も薄れる結果、昔の「誰もが何かを生産しては交換し生きていく時代」に逆戻りしていくのではないだろうか。
 
 【略歴】なか・あきこ 京大経済卒後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後フェイスブックジャパンの立ち上げに参画。12年に月間40万人が利用するビジネスSNSを運営するウォンテッドリーを設立。30歳。

 ※日刊工業新聞で連載している「卓見異見」は、経営者や識者が毎週交代交代で約半年間に渡って寄稿してもらう人気コーナー。仲さんには昨年10月から計5回執筆して頂きました。4月からは坂村健東大教授など4名の方が担当しています。

日刊工業新聞2015年02月02日 パーソン面

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

最近のウェブサービスの若手起業家は、IoTなどの文脈でハードウェアやモノづくりの面白さや重要性を認識する人がほんとに多くなった。起業家という特性上、そこに大きなビジネスチャンスを感じているからだろう。

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