目標より早ければいいわけじゃない!生産サイクルタイムとは

おすすめ本の抜粋「新人IErと学ぶ 実践 IEの強化書」

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IE(インダストリアル・エンジニアリング)は工場の現場をはじめとして、様々な物事を改善していくための手法です。現場ではこの手法を活かして業務を改善し、生産性の向上を図っています。しかし、一口に改善といっても、一体何に注目していけば良いのでしょうか。自動車メーカーに入社した新人IEr(アイ・イー・ヤー)の佐藤くんと、彼の先輩にあたる鈴木さんの会話を交えながら、IEを現場で実践する極意をお伝えします。

生産ラインを見てムダを見つけて改善する

目標サイクルタイムは生産要求量から決める

新人の佐藤くんと先輩の鈴木さんは、車両組立課にきました。この職場はコンベア式組立ラインのため、コンベアで移動する車両ボディーに対して、各作業者が担当する部品を順次組みつけていきます(図1)。

図1 車両組立ライン

鈴木:現在このラインでは、Pというモデルを1日当たり300台生産しているの。佐藤くん、コンベア式組立ラインの場合、ラインスピードはどのように設定するか覚えている? 座学の「ラインバランシング」のところで教わったでしょ?

佐藤:確か生産台数と生産時間から「サイクルタイム」が算出できるので、目標サイクルタイムをもとにコンベアスピードを決めるのだと思います。

鈴木:そうね。要求されている台数を、よい品質で効率的に生産することがモノづくりの基本的な考え方だということは、すでに頭にたたき込んでいるかな。目標サイクルタイムは、要求量である生産台数と生産時間から決まる。だから、以下の式で求められるわね。

目標サイクルタイム(分/台)=生産時間(分)/生産台数(台)

鈴木:鈴木:このラインの場合は生産時間450分/日、生産台数300台なので、目標サイクルタイムは1.50分/台ね。

目標サイクルタイム(分/台)=450分/300 台=1.50(分/台)

鈴木:目標サイクルタイムがこの工程に要求されている生産のスピードなのよ。

佐藤:では、これより早く生産すればよいのですね?

鈴木:いいえ、そうじゃないの。早く生産すると、より多くの工数がかかったり、後工程の在庫が増えたりしてムダを発生させてしまうわ。目標サイクルタイム通りにつくることをめざして、つくれない場合は、その要因を見つけて改善するようにしてね。

佐藤:早ければいいってわけではないんですね。わかりました。

作業編成のよい悪いは作業編成効率で評価する

佐藤くんと鈴木さんは、このラインの休憩所へ行きました。

鈴木:これがこのラインの“今月”の作業編成よ(図2)。これを見てどう思う?

図2 作業編成(改善前)

佐藤:作業量が少ない人も多くて、あまりよい編成とはいえないと思います。

鈴木:そうね。佐藤くん、作業編成のよい悪いはどうやって評価するか覚えている?

佐藤:はい。「作業編成効率」で評価します。作業編成効率の算出方法は、確かこうだったかな…。

作業編成効率(%)=総作業時間(分)/(作業ステーション数×目標サイクルタイム(分))×100

鈴木:その通り! 各作業者を1つの作業ステーション(作業工程)とすると、このラインの場合はこの式で計算できて77.1%になるわね。

作業編成効率(%)=8.1(分)/(7×1.50分)×100=77.1%

鈴木:ところで佐藤くん、このラインの場合の最小作業ステーション数はいくつになる?

佐藤:6 です。

最小作業ステーション数=総作業時間8.1(分)/目標サイクルタイム1.50分=5.4→6

鈴木:よく理解しているわね。編成改善では最小作業ステーション数で編成することをめざすのよ。このラインでもすでに編成改善を実施していて、来月は以下のように6人編成を計画してるのよ。それによって、作業編成効率も90.0%へと向上するわ(図3)。

図3 作業編成(改善後)

佐藤:なるほど、7人編成から6人編成へと改善したんですね。

鈴木:今後も改善を続ける場合は、最小作業ステーション数を考慮しつつ編成を改善して、“作業編成効率”で定量的に評価しながら進めようね。

佐藤:わかりました!
(「新人IErと学ぶ 実践 IEの強化書」pp.58-62より一部抜粋)

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書籍紹介

モノづくり変容/真の生産性向上に導くIE実践のバイブルとしてまとめた本です。活動の全体像と勘どころを対話形式で平易に伝えます。「動作」「工程」「生産ライン」「施設」「経営資源」とレイヤー別にムダ排除のアプローチを手ほどき。各種定義や分析技法などもやさしく図解しています。

書名:新人IErと学ぶ 実践 IEの強化書
編者名:日本インダストリアル・エンジニアリング協会
判型:A5判
総頁数:208頁
税込み価格:2,420円

目次(一部抜粋)

【第1章】IEとは
Q1 IEって何ですか?
Q2 具体的にどこでどう使われるのでしょうか?
Q3 IEって工場の現場改善のために使う手法なのでは?
Q4 「ムダ」を見つけるって、どうやれば見つかるのでしょうか?
Q5 手法もいろいろな種類がありますが、どんな違いがあるんですか?
Q6 「ムダ」を見つけた後、「改善」に結びつけるにはどうしたらよいのでしょうか?
Q7 IEってどうやって学んだら職場で成果を出せるようになりますか?

【第2章】新人IErが身につけたい実践の勘どころ
2-1 動作・作業 対象:作業者
2-2 工程 対象:人・モノ・設備
2-3 ライン 対象:ライン
2-4 施設全体 対象:レイアウト・物流
2-5 経営 対象:サプライチェーン

【第3章】IEを実践するために知っておくべき基礎知識
3-1 現状を分析する手法
3-2 基本用語

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