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“女子会の知恵”生産現場に―ダイバーシティー進む日産・横浜工場

人間工学に基づいて人にやさしい職場環境を作る「エルゴノミクス」
“女子会の知恵”生産現場に―ダイバーシティー進む日産・横浜工場

女性スタッフの知恵でAGVの充電器のセットが楽になった

 ダイバーシティーを進める日産自動車。女性管理職の割合を増やすといった会社上層部での実績が注目されがちだが、その活動は生産現場にも及ぶ。国内で主力のエンジン生産拠点である横浜工場(横浜市神奈川区)では“女子会”が生産現場のダイバーシティーを支えている。

力作業を楽に


 「台車から引き出すだけでセットできるようになりました」。小さな段ボール箱ほどの大きさの充電器を無人搬送車(AGV)に手際よくセットしながら女性スタッフは説明する。相当な重量のある充電器を以前は持ち上げながら中腰の姿勢でセットしていた。きつい作業が幾分楽になったという。

 男性でも根を上げそうなこうした作業。その負担を軽減する工夫が横浜工場では随所に施されている。洗浄液を装置に投入する作業では、洗浄液が入った一斗缶を5メートルほど持ち運んで肩の高さまで缶を持ち上げて注いでいた。専用の台車で運んで自動ポンプで投入できるようにした。

 さらに過酷なのは産業用車両のバッテリーに蒸留水を注ぐ作業。注ぎ口は高さ2メートルのところにある。車両をよじ登り、やかんに入れた水を中腰で注ぐ。それを5回繰り返して1作業で計20リットルを注いでいた。空気圧で上下するジャッキ式の台車を導入して負担を減らした。いずれも20代前半の女性スタッフの知恵から生まれた改善事例だ。

 日産は仏ルノーと一緒に世界の工場で同じ生産方式を広げているが、重視するのが「エルゴノミクス」。人間工学に基づいて人にやさしい職場環境を作ろうという取り組みだ。

細かな気づき


 横浜工場のサスペンション課の若手女性スタッフが結集し、女性視点によるエルゴノミクス改善を本格始動したのは1年前。各作業の肉体的な負担を、作業時の姿勢と負担の大きさを軸に評価し4段階に分けた。先述の事例は、最も過酷な作業に分類され、優先して手を打ったもの。力技に頼らない女性ならではのきめ細かな気づきを改善につなげる。全日空の整備部門など他業種の先進事例も参考にしており「改善の種はまだまだある」(女性スタッフ)という。

環境づくり


 日産はダイバーシティーを推進し、同課の女性スタッフも今の8人から5年後に13人なる見通し。技能職で採用される人材枠だ。現在同課の人数は280人で女性比率は他の生産現場と同様に決して高いとは言えないが現場で女性が活躍できる将来を見据えれば女性の働きやすい環境づくりは待ったなしだ。

 女性だけではない。60歳を迎える男性スタッフも増える。年を重ねるほど重労働の負担感は重くなる。経験豊かな人材の活躍を維持するためにもエルゴノミクス改善の意義は大きい。丸田美徳同課係長は「2年後にはエルゴノミクス改善を100%導入したモデルラインを構築する」と意気込む。その実現に向けて横浜工場の女子会への期待は大きい。
(文=池田勝敏)
日刊工業新聞2015年11月18日 自動車面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
働きやすい、作業しやすい環境を作ることは肉体的な負担の軽減だけでなく、精神的負担の軽減にもなります。負担が減ればヒューマンエラーも少なくなるでしょう。「女子会」に、シニアや男性もどんどん参加してほしいですね。

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