コロナ治療薬「変異株」対応へ、国内創薬ベンチャー各社が今年中の臨床試験開始へ

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写真はイメージ

新型コロナウイルス感染症の治療薬開発の方向性が変わろうとしている。変異株への治療効果を重要な要素に位置付け、長期的に活用可能な薬を対象に開発を進める方向にかじを切る。創薬ベンチャー業界で治療薬開発に名乗りを上げているペプチエイドとオンコリスバイオファーマでは、変異株への効果の確認が進む。創薬ベンチャーならではの機動力が感染症の治療薬開発に生きている。(門脇花梨)

「ウイルスにおける“弁慶の泣きどころ”を攻撃できる」―。ペプチドリームの金城聖文副社長は、同社など5社で立ち上げた共同出資会社、ペプチエイドが開発中の化合物「PA―001」の強みを明かす。

PA―001はアミノ酸が結合した化合物「ペプチド」であり、ウイルスが人の細胞に入る前に作用し、侵入を阻害する。サイズの小さいペプチドだからこそ狙える、かつ変異しにくい部位に作用する。特効薬となり得る。

実際に英国変異株で試験したところ、高い抗ウイルス活性を有することが確認できた。南アフリカ株、ブラジル株などに対しても同様の効果を示すデータの蓄積が進む。現在、最終の確認試験が進行中だ。

細胞に入るのを阻害するだけでは既に入ったウイルスに効かないようにも見えるが、ウイルスの治療薬は「入らないようにする」ことも重要だという。

金城副社長は「体に入ったウイルスは早期であれば数が少なく、免疫機能で対抗できる。増殖したウイルスが細胞から出て周辺細胞に侵入するのを防げば、最終的に体内からいなくなる」と解説する。

2021年中の臨床試験開始を目指し、開発を進める。

オンコリスバイオファーマが開発する「OBP―2011」は、人の細胞に入ったウイルスが増加するのを抑制する。通常の新型コロナのほか、英国型やブラジル型などでも同等の効力を示すことを、細胞培養系の実験で確認した。将来、変異型コロナウイルスが再びパンデミックを起こしても、早期感染者の治療に用いることが想定できる。

浦田泰生社長は「OBP―2011は、新型コロナウイルスを細胞に感染させて10時間後に投与しても、増殖を止めることが確認できた。レムデシビルは10時間後の投与では増殖を止められない。PCR検査陽性患者にすぐにOBP―2011を投与すれば、かなり効果を上げるだろう」と期待を込める。

現在、22年の臨床試験開始を目指している。

変異することで感染力を上げ、定期的にパンデミックを起こすコロナウイルスだが、感染症という性質上、収束すると治療薬のニーズは一気に落ちる。高い収益性が望めず、製薬企業による本格的な開発が進まなかった。

ただ、変異株にも対応した治療薬であれば定期的に起こるパンデミックに合わせて収益向上に期待が持てる。日本のベンチャー発で、長期的に人類を感染症から救う薬を作れるかが注目される。

日刊工業新聞2021年4月20日

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