ホンダがオープンイノベーション戦略じわり、5万件超の特許を他業界などで活用へ
ホンダは、外部の力を活用して課題解決に臨む「オープンイノベーション」戦略を拡充する。5日、保有する特許や技術を公開し、協業につなげるためのウェブサイトを開設したと発表した。グローバルで有する5万件以上の特許を、多様な業界や領域で活用する考え。また技術面でつながりが強い企業を可視化する分析ツール「K―メソッド」を年内に開発する。協業やM&A(合併・買収)の検討する際に活用する。年内にテスト販売する予定だ。
ホンダが5日開設したサイトには、防錆皮膜や蒸留水生成など、ライセンス提供が可能な技術10件を掲載した。製品化までの流れや、過去の協業事例も紹介している。掲載する技術は順次増やす。
これまでも同社の技術に関心を寄せる企業と個別相談に応じてきたが、専用サイトを設けることで協業の間口を広げる。技術提供時には、ロイヤルティー(使用料)を受け取る。
これまでも軽自動車「N―BOX」のシートに採用した抗ウイルス・抗アレルゲンの機能を持つ生地「アレルクリーンプラス」を内田洋行のオフィスチェアに提供するなど異業種と協業してきた。
K―メソッドは特許出願情報を元に、関連性の高い技術を持つ企業を可視化するソフトウエア。異業種との協業可能性を探るのに活用する。
このほか知的財産関連の取り組みで同社は、デジタル変革(DX)を活用し管理業務の効率化を図っている。
インタビュー/知的財産・標準化統括部統括部長・別所弘和氏
知的財産戦略の方向性について、ホンダの知的財産・標準化統括部の別所弘和統括部長に聞いた。(江上佑美子)
―技術ライセンスサイト開設の意義は。「当社はさまざまな技術を持っているが、社内では4輪車や2輪車への展開にとどまる。4輪車などの用途で培った耐久性や信頼性は他の分野でも活用できる。他社に使ってもらえば世の中に広く役立てることができ、技術者のモチベーション向上にもつながる」
―K―メソッドを21年中に発売予定です。「アルゴリズムを用い、企業が持つ知財のつながりを線で示す。他社の特許も含めて分析し、M&Aやオープンイノベーションに活用する。図を読み解くノウハウはK―メソッドの提供先と共有し、ツールを高度化する」
―人工知能(AI)などを活用し、知財関連業務の効率化を進めています。「19年に世界で保有する特許の維持に関する判断にAIを導入した。知財を生み、展開し、管理するという全ての工程に関し、デジタル変革(DX)の可能性を探っている」