進化したトヨタ「ミライ」の燃料電池システム、裏に触媒とワンチームあり

「挑戦と技術革新の連続だった」

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初代を上回る性能と量産性を実現した2代目「ミライ」(同社公式サイトより)

トヨタ自動車が本格的な普及拡大を目指して、高性能かつ低コスト化した第2世代燃料電池(FC)システムだ。開発開始は2015年。初代を上回る性能と量産性に加え、通常の車生産ラインで量産すべく、初代は床下搭載だったFCスタックを前方フードに収めるよう小型化するといった目標が設定された。

高性能・小型化と低コストの両立という難題と高い目標に対し、トヨタZEVファクトリー商用ZEV製品開発部FCスタック開発室の水野誠司チーフプロフェッショナルエンジニア(CPE)は「世に手本がなく、挑戦と技術革新の連続だった」と振り返る。

着目したのが、電極に使われる高コストな白金触媒だ。新工法で触媒を担持する多孔質カーボン材料を材料メーカーと共同開発し触媒の性能を向上。使用量を半減しながら、面積当たりの出力を15%高めた。またシール素材を刷新しFCスタックを構成するセルの接着速度を分単位から秒単位に短縮したり、1枚1枚加工していたFCセパレーターの表面処理をロールツーロール方式でできるようにするなど、性能と耐久性、生産性を満たす技術を開発してきた。

設計、生産技術から製造、品質管理までが同じ建屋で「ワンチーム」として取り組む体制を敷いた。加えて材料メーカーや設備メーカー、部品メーカーなどと密に連携。水野CPEは「たくさんの壁にぶち当たったが、関係各所としっかり議論しながら知恵を絞ったことに尽きる」と、感慨を深める。

FCシステムは主要機器をパッケージ化して、外販する計画。乗用車以外にもトラックやバスなどの商用車、船舶、定置用発電機など幅広く普及を加速する。サービスやメンテナンスなどもセットで、水素社会の拡大を目指す。水野CPEは「環境にも人間にもクリーンで静かに発電できるFCを広めたい」と期待を寄せる。

第2世代の燃料電池車「MIRAI(ミライ)」に搭載。発電を行うFCスタックの最大出力は初代と比べ約12%増の128キロワットに、航続距離は同30%増の850キロメートルに伸ばしつつ、コストを3分の1に抑え、10倍の生産能力を実現した。小型化により居住性も向上し5人乗りとした。高圧水素タンクや、ポンプなどのシステム部品も含め全方位の技術革新で実現した。
(名古屋・政年佐貴恵)

日刊工業新聞2021年3月25日

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