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電力業界、排出目標の設定が難航
地球温暖化対策の取り組み方針を巡って環境相から“イエローカード”を突き付けられた電力業界。電気事業連合会(電事連)はすべての発電所から出るCO2の削減に向け、新規参入事業者を含む業界全体の自主的な枠組みづくりを急ぐように迫られている。だが電力小売事業の全面自由化が16年4月に迫った中での作業は難航しそうだ。
枠組みづくりの焦点は、一定量の電力販売に要した発電で、CO2をどれだけ排出したかを示す「排出係数」の目標設定だ。電事連は08―12年度のCO2削減目標として、すべての発電所を総合した排出係数を1キロワット時当たり0・34キログラムと、90年度比で約20%低減する方針を掲げてきた。政府の新しいCO2削減目標を踏まえ、これを見直す必要がある。
実際の係数は、原子力発電所の運転停止などで悪化している。それでも電事連はこの間、政府の新しい温室効果ガス削減目標やエネルギーミックス案の仕上がりを見極めるため、新たな枠組みに関する本格的な検討を先送りしてきた。原発の再稼働時期が見通せないことも足かせになった。ここにきて議論の前提が整ってきたことから、JX日鉱日石エネルギーや昭和シェル石油などの新規参入企業を交えた検討会を設置し、具体策づくりに本腰を入れ始めた。
だが作業は曲折が予想される。「CO2削減に長年取り組んできた既存の電力会社と新規参入組に、一律にキャップをはめるかどうか」(業界関係者)で利害が対立しそうな気配だ。背景には自由化後をにらみ、コスト競争力で優位に立ちたいというそれぞれの思惑がある。ほかの火力発電所より低コストで運転できる半面、CO2排出量が多い石炭火力の建設の是非は、キャップのはめ方に大きく左右される。作業が長引けば、ほかの石炭火力に対するアセスメントの結果にも影響しかねない。
IGCC有力
次世代石炭火力発電の中で、発電プラントメーカーが事業として当面有力視しているのはIGCCだろう。三菱日立パワーシステムズ(MHPS)はIGCC連続運転世界記録を達成した常磐共同火力の勿来発電所10号機を設計・建設した実績を持ち、14年9月には東京電力が福島県内に建設する発電出力50万キロワット級IGCCの設計業務を受注。これは福島県の経済再生を後押しする産業基盤や雇用機会の創出を目的としたプロジェクトで、最新鋭石炭火力発電の象徴になりそうだ。
「IGCCは石炭火力の新設が実質的に認められない米国にも売っていける技術。低品位炭にも対応しており、南アフリカ共和国やチリ、メキシコ、ポーランドなど新興国も興味を示している」(MHPS関係者)。MHPSは別方式の大崎クールジェンプロジェクトにも参画しており、IGCC市場で優位なポジションにあるのは間違いない。一層のコストダウンが普及のカギを握る。
日刊工業新聞2015年11月11日2面