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5日間履いてもシワがつかない綿パンを動画で伝えた「Bluff Works」

文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)明確なストーリー構成、パッションを見えるように

KickStarterの成功例と失敗例を調べ尽くし、ポイントを研究


 こうして生まれたBluff Worksの主力商品の「REGULAR FIT」93ドル(約1万1000円)は100%ポリスチレンでできている。速乾性で蒸れにくい他、ビジネスシーンに合わせてスマートフォンを取り出しやすいポケット、旅人時代の経験を生かしてか、貴重品を守ることのできるチャック付きのポケットが設けられているという。

 ビジネスシーンでも使えるしわになりにくいズボン、という機能は大きな強みだが、似たような売りの製品は他にもあり、少々差別化やブランディングが難しいと思われる。しかし同サイトの場合はその点をKickStarterや動画を積極活用することで、自分たちのブランドと製品の特長を認知させることに成功しているようだ。

 実はロブル氏は創業前からKickStarter上で100以上のプロジェクトを支援してきており、Bluff Worksの名でプロジェクトを立てるときにはその経験を生かし、徹底的にプロジェクトの成功例、失敗例を調べた。

 その結果分かったことは、KickStarterにおけるプロジェクトの成否はその紹介ビデオによって大きく決定づけられるということだった。そこで、その紹介ビデオ作成において以下のことにこだわったという。

 まずビデオのストーリー、流れを構成すること。なぜ商品を開発することになったのか、創業者個人のパッションが見えるようにすること、またその商品が顧客にどのようなメリットをもたらすのかを具体的に想像させること、そしてビデオは長くしすぎず、3分30秒以内に収めることだ。

 実際のBluff Worksの動画では、前半にて旅行時や創業後の写真などをバックに、創業者のロブル氏が東南アジアを旅する中でシワのいかないズボンを履いていたこと、そのズボンは旅には良いものの日常生活のオフィスワークにはデザイン的に適しておらず履くことが難しかったことを紹介。

 そしてシワのいかない、汚れにくく、しかもオフィスワークにも履いていけるデザインのズボンがあれば、人々が洗濯、アイロンから解放されて生活が楽になると考えてズボンの開発にあたったという創業の経緯を語っている。

 また動画の後半では、このズボンの機能性を示すため、実際に5日間同じズボンを履いて生活し、洗濯やアイロンをせずとも問題ないということを示した。動画では自転車に乗ったり仕事をしたり、家で子どもと遊んだり海岸に行ったりなど、かなりハードな使用を行った。しかし5日目になってもズボンにシワはできることなく当初と同じ状態を保った、という結末だ。

 このようにして、「なぜこの商品を作ろうと思ったのか」「どのような特長があるのか」という点を明確に伝えることのできたBluff Worksは、1回目の商品リリースの2012年5月には1181人の支援者から合計12万8722ドル(1544万円)を集めることに成功した。また2回目となった2015年6月のリリースのときにも、781人の支援者から合計11万8477ドル(1421万円)の支援を受けている。

 明確なストーリー構成、パッションを見えるようにすること、利点をイメージさせること、利用者を飽きさせない、最初から見たくないと思わせないよう、コンパクトにすること。Bluff Worksは製品の確かさもさることながら、ストーリーを伝えるための基本的なポイントを押さえることで成功したブランドだったと言えるだろう。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
KickStarterは実際CMも兼ねているということですね。

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