途上国と先進国でワクチン接種に格差、米中の政治利用も先鋭化

  • 0
  • 1
マスクを寄付するなど、医療物資の調達を支援する(エーザイ提供)

新型コロナウイルス対策で、先進国と途上国の格差が問題になっている。ワクチン接種が先行する欧州や米国に対し、途上国は接種以前にワクチンの分配が課題。政府や製薬企業は国際的な活動を通じ、途上国支援に乗り出している。他方、“クアッド”と呼ばれる日米豪印4カ国は中国のワクチン外交をけん制し、アジア諸国に10億回分を提供することで合意するなど、政治利用もされ始めている。

(取材=安川結野)

エーザイは、新型コロナ感染症が拡大するケニアで、PCR検査ラボの設立や検査に必要な機器の調達、検査技師の訓練を行う活動を支援する。ケニアでは、検査に必要な設備や技師が不足する。そのため検体を首都ナイロビへ送らねばならず、迅速な検査による感染状況の把握が難しかった。支援はケニアの東部州で最大となる約135万人の人口を有するカウンティ(行政単位)のメルーカウンティで実施するとしており、検査拠点の構築と体制整備により、感染拡大防止への貢献が期待される。

エーザイのアフリカ地域への支援の取り組みは2020年に始まっており、支援額とし100万ドル(約1億858万円)を計上する。新型コロナを対象とした臨床試験のほか、顧みられない熱帯病「NTDs」の制圧に向けた活動や、医療関係者・住民向けのモバイルヘルスプラットフォームの開発と普及が新型コロナにより遅延しないよう支援する。今後も現地の新型コロナ対策の取り組みへ支援を継続する。

途上国にワクチンを供給する取り組みも進む。世界保健機関(WHO)などが主導する新型コロナのワクチン供給の国際的な枠組み「COVAXファシリティー」において、ワクチン供給が始まった。高・中所得国がCOVAXに費用を支払ってワクチンを共同購入し、途上国へワクチンを供給するとともに自国分のワクチンが確保できる仕組み。日本政府もCOVAXに参加しており、172億円を拠出した。

英アストラゼネカと英オックスフォード大学が開発したワクチンや、米製薬大手ファイザーのワクチン供給が始まった。COVAXの取り組みでは、途上国を含む約190カ国に対し、21年中に約20億回分のワクチンを配分するという。

しかし現在世界で使用が認められるワクチンは限られ、十分に行き渡るかは見通せない。先行き不透明なワクチン問題は、クアッドと中国によるワクチンの覇権争いさえ誘発している。

日刊工業新聞2021年3月16日

関連する記事はこちら

特集