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今日は「介護の日」転ばぬ先の杖で高齢者サポート!

「見守りシステム」と「歩行アシストシステム」の需要高まる
今日は「介護の日」転ばぬ先の杖で高齢者サポート!

ナブテスコは次世代アシスト歩行車の開発に着手


懸念される「健康寿命」との差


 「”転ばぬ先の杖“の市場は大きく広がる。歩行アシスト機器は国内で5000万台以上使われても不思議ではない」。RT.ワークス(大阪市東成区)の河野誠社長はこう語り、歩行アシスト機器の普及に強い自信をのぞかせる。

 同社はロボット・IT技術を駆使して開発した最新機器をこのほど投入。現在、介護・福祉業界では多くのメーカーが同機器の開発に乗り出しており、今後数年で市場が一気に開けそうだ。

 高齢者が1人で操作する手押し車(カート)タイプの歩行アシスト機器は、買い物など日常生活での屋外移動時に手軽に利用できるのが特徴だ。

 搭乗するのではなく、高齢者は歩行アシスト機器を使い自らの足で歩く。外出頻度が増えれば生活も充実し、元気に歩くことは身体機能の維持・向上にもつながる。

 RT.ワークスが発売した製品は各種センサーが路面状況や歩く速度、荷物の重さなどを検知し、ハンドルに手を添えるだけで歩行をアシスト。上り坂でパワーアシスト、下り坂で自動減速を行う。全地球測位システム(GPS)などを利用し、歩行経路や現在位置を家族がモバイル端末で確認することも可能。カートの転倒を関係者に緊急通知する機能など、今後はサービスも拡充していく。

 ナブテスコも自動アシスト・ブレーキ、急加速時の転倒防止ブレーキを搭載したアシスト歩行車を開発中だ。同社は介助用電動車いす「アシストホイール」も手がけており、次世代製品は「従来の抑速ブレーキやアシストホイールで培った制御技術を融合させる」(竹澤善則ナブテスコ住環境カンパニー福祉事業推進部技術グループリーダー)。

 介護・福祉分野向けに階段昇降機などを提供する大同工業も、歩行アシスト機器に本格参入する。カートを押す手元部で自動抑速機能を操作できる新製品を来春発売する計画だ。

 カート前方部に幅広の荷台スペースを設け、「スーパーマーケットの買い物かごを置けるサイズにした」(大同工業)という。

 リョーエイ(愛知県豊田市)が実用化を目指す「ロボスネイル」もユニークな機能を持つ。前面が開けたカート型の歩行機器として利用し、背面に収納した座席部分を下げると自走・介助式車いすに変身する仕組みだ。

 歩行アシスト機器の需要が高まる背景には「健康寿命」がある。日本人の平均寿命(男性80・21歳、女性86・61歳)は今後さらに延びるが、健康寿命との差が懸念される。

 高齢者が健康で自立した生活ができる期間を延ばすには、病気だけではなく転倒・転落による骨折やけがにも注意が必要だ。要介護や寝たきりの期間が延びれば生活の質は向上しない。介護用の車いすはあくまで”転んだ後の杖“であり、利用者が増えるのは問題だ。超高齢社会に突入する日本では、転ばぬ先の杖として機能する生活サポート機器を充実していかなければならない。
(文=宮川康祐)
日刊工業新聞2015年10月15日/16日ヘルスケア面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
日本の平均寿命と健康寿命の差は年々広がっている。日本の高齢者は約10年もの長期にわたって介護が必要な状態が続いており、それに付随して介護者の金銭的負担や身体的・精神的負担が生じている。平均寿命と健康寿命の差がもたらす負のインパクトは、社会にも大きくのしかかる。厚労省の推計では、社会保障費のうち医療給付費は、2012年度の35兆円から、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年には54兆円に拡大すると指摘。介護給付金(約20兆円)と合わせると社会保障給付費全体の約5割を占め、年金の約4割を超える規模になるとみらている。

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