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トヨタ、AIの新会社をシンリコンバレーに

ヒトもカネもコンピューターも集まってくる
トヨタ、AIの新会社をシンリコンバレーに

トヨタ・リサーチ・インスティテュートのCEOに就任するギル・プラット氏(左)とトヨタ自動車・豊田章男社長


グーグルとNASA、最新の「量子コンピューター」導入


ニュースイッチ2015年10月5日公開


 米グーグルとNASA(米航空宇宙局)、大学宇宙研究協会(USRA)の共同研究プロジェクトが、カナダのDウェーブ・システムズ(D-Wave Systems)との間で、Dウェーブの最先端「量子コンピューター」技術について最長7年間にわたり提供を受ける契約を結んだ。この契約に基づき、シリコンバレーにあるNASAエイムズ研究センターに1000量子ビットを持つDウェーブの最新機種「D-Wave 2X」を導入、人工知能(AI)や機械学習、難解な最適化問題の解決法といった研究に役立てられるという。

 Dウェーブは2007年に最初の16量子ビットのマシンを開発。続いて2013年には512量子ビットの「D-Wave 2」がNASAエイムズ研に導入され、グーグル、NASA、USRAの研究チームがその性能を研究したり、ウェブ検索や音声認識、計画スケジューリング、ロボットを活用する無人宇宙ミッション、管制センターでの支援作業といった分野での応用研究を行っている。2Xはこれまでの機種の倍の量子ビットを持ち、Dウェーブでは今後も消費電力はほぼ変わらず、量子ビットを拡張したモデルを供給していく方針だ。

 ただ、Dウェーブのコンピューターをめぐっては、その登場以来、「本当に量子コンピューターなのか」「量子コンピューターと呼べるのか」という批判が絶えない。加えて、一般的な量子コンピューターに期待されている性能ほどはパワフルではないとも言われている。

 通常のコンピューターでは、回路を構成するトランジスタ素子が電気的に0か1かどちらかの状態をとり、それを1ビットの情報量として演算処理を行う。それに対し、1985年に英国の物理学者デイヴィッド・ドイチュが提案した一般的な量子コンピューターは、同時に0と1の2つの状態をとる量子力学上の「量子重ね合わせ」の原理をもとに、通常のコンピューターとは桁違いの超高速演算ができるとされる。2つの状態を取る量子ビット(キュービット=qubit)を使うもので、例えば2量子ビットだと(00、01、10、11)の4つの値を同時にとることができ、量子ビットを増やせば、指数関数的に性能が上がっていく。とはいえ、問題は量子ビットを作るのが非常に難しい点にある。

 Dウェーブの「量子コンピューター」は実は、こうした方式ではなく、「量子アニーリング」の理論をもとに設計されている。量子アニーリングとは、最適化問題の解法の一つで、1998年に東京工業大学の西森秀稔教授と当時大学院生の門脇正史氏が提案した理論。量子的な揺らぎを利用して最適化問題を解くのに使われ、そのアルゴリズムをコンピューターに組み込んでいるという。そのため、一般的な量子コンピューターが幅広い用途を想定しているのに対し、このマシンでは機械学習などを含めた最適化問題の解法に用途が限定される。

 それでもグーグルは、Dウェーブのマシンが通常のコンピューターの性能を上回ると見ており、量子ビットが拡張された新型機では量子並列性による性能向上がどれだけあり、どんなことができるのかを見極める考え。

 一方、南カリフォルニア大学のダニエル・ライダー教授らは、Dウェーブのコンピューターが量子アニーリングのアルゴリズムを使っていることを裏付ける研究成果を報告している。防衛・航空宇宙大手のロッキード・マーティンが保有する「D-Wave 2」を使った調査研究で、「これまで指摘されていたような古典的な計算モデルを使っているわけではない」との論文をまとめ、2013年にネイチャーコミュニケーションズ誌に掲載されている。

 量子コンピューターをめぐる研究はこのところ活発化しており、米IBMが基礎研究に力を入れているほか、グーグルもDウェーブとは違う量子コンピューターを社内で研究中。また、米インテルは9月初め、オランダのデルフト工科大学、オランダ応用科学研究機関(TNO)と組んで、量子コンピューターを実現するための極低温超電導の電子システムの研究開発向けに、5000万ドルの投資を行うと発表している。
日刊工業新聞2015年11月07日電子版
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
さすがにトヨタだけあって集める人数も他の日本企業と比べものにならない。でもそのくらいしないとグーグル、IBM、アップルなどに対抗できない。いや、対抗するというより、これらの企業とこれからどう連携していくかも、トヨタの未来の可能性を変えていくはず。

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