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メイコーと山梨大、静電塗布装置試験の運用を開始

メイコーと山梨大、静電塗布装置試験の運用を開始

燃料電池触媒静電塗布装置「MES―Lab」

メイコー(山梨県甲斐市)は、山梨大学の内田誠教授と共同で、ラボでの評価用セル作製など向けに電解質膜表面に白金触媒を塗布する静電塗布装置「MES―Lab」の試験運用に入った。このほど、石英ガラス製の噴霧ノズル12本の多連塗布ユニットで触媒インクの塗布をテストし、ほぼ狙い通りの塗膜を得ることができた。今後ユニットのノズル本数を90本程度に増やし、量産化への道を探る。

従来は1本の金属ノズルを用いて静電塗布作業していたが、1平方センチメートルの塗布に1時間程度かかっていた。今回の実験では、吐出口の内径約0・2ミリメートルの石英ガラスノズルを12本並べた多連ユニットの採用で、ユニットの広さに応じて一度に静電塗布できるようにした。

絶縁材のガラス管を利用し、触媒インクと電解質膜に直流電圧をかけて静電塗布する仕組みだが、ノズル先端にできる液滴を理想形状とするため、同形状をカメラで常時監視しながら全体にかける電圧をフィードバック制御。さらに重力の影響をそぐためにガラス管内の圧力を真空引き(サックバック)でフィードバック制御する。

その上で、全ノズル間の距離を等間隔(隣り合う三点を結ぶと全て正三角形)にしてムラのない塗布層ができるようにした。今後、ノズル本数を200本に増やした「MES―Pro」、同1000本にした「MES―Map」など量産機種の開発につなげる考え。

一般的に水素燃料電池自動車向けなどでは、液体インクを塗り広げるスリットコーター式を用いているが、乾燥に手間がかかるのが難点で、膜厚も数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の薄さに止まる。「中国などで用いられている超音波スプレー法は材料の歩留まりに難点がある」(米山詩麻夫メイコー特別技術顧問)という。今回の静電塗布装置は「液滴が飛翔(ひしょう)中に乾燥するため乾燥の手間いらず。また、最薄では数マイクロメートル厚が可能。薄くすることで抵抗も下がり、白金量を減らすメリットもでる」(同)としている。

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