復興の今、ロボットと水素の街となる福島・双葉町

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双葉町から福島県の復興を発信する3拠点(「東日本大震災・原子力災害伝承館」「産業交流センター」浪江町にまたがる「福島県復興祈念公園)」の合同開所式(20年11月)

復興はいまだ道半ば。その道のりの中で、私たちはいまどこに立っているのかー。客観的なデータに基づき、現実と向き合うことは福島の未来を考える一步となる。

ロボットのまち、水素のまち

2021年、年明け早々の福島県双葉町。江戸時代から震災後も途絶えることなく開催されてきた「双葉町ダルマ市」。コロナ禍の2021年も「双葉ダルマ販売」に形を変えて、伝統をつなぎ、会場はひとときの活気に包まれた。

開催場所となったのは20年10月にオープンした「産業交流センター」。東京電力福島第一原子力発電所が立地する双葉町が整備を進めてきた。県の「東日本大震災・原子力災害伝承館」や復興祈念公園にも隣接するこの施設には、東京電力ホールディングス(HD)復興本社をはじめ10の企業や団体が入居。ビジネスのみならず、特産品販売や地元グルメ情報の発信拠点として、国内外の来訪者との交流を通じた地域振興を目指す。

緒に就き始めた福島の産業復興。製造品出荷額は、地域間に幅があるものの、おおむね震災前の水準を回復しつつある。商工会連合会の調査によると、20年7月時点で、被災12市町村では、会員事業所の約7割に上る1786事業所が事業を再開。うち4割が地元での再開だ。

新産業の創出を目指す国や自治体の助成金を活用した企業進出や投資も旺盛だ。20年3月に全面開所した「福島ロボットテストフィールド」には、ドローン・スタートアップなどが入居しており、地元の南相馬市は「ロボットのまち」を打ち出す。他方、世界最大規模の水素製造装置を備える「福島水素エネルギー研究フィールド」を擁する浪江町は、「水素のまち」。いずれも先端産業の集積地としての輪郭が浮かび上がる。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが整備を進め20年3月にオープンした「福島水素エネルギー研究フィールド」

企業や人の新たな流れが生まれることへの期待感が高まる一方で、ピーク時には10万人を超えた県内外への避難者数は、いまなお約3万7000人を数える。さまざまな理由が考えられるが、いずれにしてもふるさとへの帰還は道半ばだ。

段階的に進む避難指示解除

原発から80キロメートル圏内の地表面から1メートルの高さの空間放射線量から推計した年間積算線量は震災から8年で約78%減少した。とはいえ、立ち入りが制限される「帰還困難区域」は、双葉町、浪江町、大熊町など7市町村に残る。

避難指示をめぐっては①事故後5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らない恐れがある「帰還困難区域」②年間積算線量が20ミリシーベルトを超える恐れがある「居住制限区域」③住民の帰還に向けた復旧・復興準備を進める「避難指示解除準備区域」の3区域が設定されてきたが、14年4月以降、段階的に解除が進められてきた。19年4月には福島第一原発立地自治体として初めて大熊町の一部(帰還困難区域を除く)の避難指示が解除。全町避難が続く双葉町についても2020年3月、町の約4%にあたる一部地域で避難指示が解除された。双葉町においては、JR常磐線双葉駅を中心とする約555ヘクタールが特定復興再生拠点区域に認定され、22年春を目標に、この区域の避難指示解除に向けた環境整備が進む。

漁業、本格操業への期待

「なりわい」と「にぎわい」を取り戻す動きが着実に進展する一方、農業や水産業の進展にはいまだ課題がある。震災以降の福島県産農水産物の価格と全国平均価格を比較すると、近年は回復傾向にあるものの、価格差はいまだ存在する。また、諸外国の福島県産品の輸入規制についても、原発事故に伴い、規制を設けた54の国・地域のうち、39の国・地域ですでに輸入規制が撤廃されたものの、15の国・地域では規制が継続するのが現状だ(2021年1月29日時点)。

こうしたなか、希望の灯火といえるのが、沿岸漁業の本格操業再開である。原発事故を受け、県沿岸の漁業は全面的な自粛を余儀なくされてきたが、操業日数や海域を限定し、出荷先の評価を探る試験操業が段階的に進められ、20年3月にはすべての魚種が操業対象となった。福島県沖の19年の水揚げ実績は約3640トンと、原発事故前の14%にとどまるだけに、漁業関係者からは本格操業への期待が高まっている。

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復興 東日本大震災

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