キリン、顧客データ分析強化―キャンペーン応募顧客のセグメント化
第三のビールや発泡酒ブランドだけに応募している人は「節約志向が強い」
**「顧客データ分析チーム」を1月に立ち上げ
消費者の購買行動や嗜好(しこう)が多様化し、食品・飲料のニーズが読みにくい時代になっている。そうしたなか、あらゆるデジタルデータを活用することで行動や好みを細かく分析し、アプローチの確度を高めようとする動きが各メーカーで活発化してきた。ビールやワインなど酒類と清涼飲料の事業会社を傘下に持つキリンも、その動きを加速させている。
キリンはデータ利活用の可能性を引き出すため、デジタルマーケティング部内に「顧客データ分析チーム」を1月に立ち上げた。IT能力、データ分析、マーケティングの三つの要素が重要だと判断し、それぞれを得意とする人材から一人ずつ選抜し、3人体制で活動している。
現在、同チームが注力するテーマは、自社サイトとキャンペーンへのアクセス状況や電子商取引(EC)店舗の購買記録、工場見学の顧客リストなど、さまざまなデータからユーザーを区分け(セグメント化)すること。例えば、ビール「一番搾り」、第三のビール「のどごし〈生〉」、清涼飲料「午後の紅茶」などのキャンペーンに応募している顧客のセグメント化。
すべてに応募している人はキリンの「コアファン」、第三のビールや発泡酒ブランドだけに応募している人は「節約志向が強い」といった具合だ。「(複数事業を統括する)中間持ち株会社内にあるチームだからこそ、こうした分析ができる」(顧客データ分析チームの宮入一将主査)という。
そこからテレビCMなどのマス広告やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)など、各顧客に対して適切にアプローチできる方法を模索している。
**キリンデジタルマーケティング部・戸川健司氏
【顧客視点持てる人材を社内で育成】
顧客データ分析チームの立ち上げで中心的な役割を担った、デジタルマーケティング部の戸川健司氏にデータ活用の方向性や人材育成などを聞いた。
―データをうまく活用する要素として何が必要でしょう。
「分析結果から、いかに仮説を立てられるかだ。例えば、クラフトビールとワインは選び方や飲み方が似ているから『提案の仕方を同じようにできるのではないか』といった問題意識だ」
―データ活用の方向性は。
「2016年には全事業部のマーケッターがデータをさまざまな場面で活用できるような基盤を整備する。データ分析を全社的に定着させたい。データを利活用しなければ乗り遅れる、という時代は必ず来る。それは顧客を理解できなくなることにもつながるはずだ」
―同チームの規模は拡大させますか。
「今はデジタルデータ分析に対する知見をためているところ。徐々に人数は増やしていく。そのために、専門知識のある中途採用者よりも社内で専門家を育成する。『キリンマインド』を持ち、顧客視点で仮説を立てられるような人物が理想だ」
(文=松沢紗枝)
(日刊工業新聞月曜日連載「データサイエンティスト・未来を読み解く」より)
消費者の購買行動や嗜好(しこう)が多様化し、食品・飲料のニーズが読みにくい時代になっている。そうしたなか、あらゆるデジタルデータを活用することで行動や好みを細かく分析し、アプローチの確度を高めようとする動きが各メーカーで活発化してきた。ビールやワインなど酒類と清涼飲料の事業会社を傘下に持つキリンも、その動きを加速させている。
キリンはデータ利活用の可能性を引き出すため、デジタルマーケティング部内に「顧客データ分析チーム」を1月に立ち上げた。IT能力、データ分析、マーケティングの三つの要素が重要だと判断し、それぞれを得意とする人材から一人ずつ選抜し、3人体制で活動している。
現在、同チームが注力するテーマは、自社サイトとキャンペーンへのアクセス状況や電子商取引(EC)店舗の購買記録、工場見学の顧客リストなど、さまざまなデータからユーザーを区分け(セグメント化)すること。例えば、ビール「一番搾り」、第三のビール「のどごし〈生〉」、清涼飲料「午後の紅茶」などのキャンペーンに応募している顧客のセグメント化。
すべてに応募している人はキリンの「コアファン」、第三のビールや発泡酒ブランドだけに応募している人は「節約志向が強い」といった具合だ。「(複数事業を統括する)中間持ち株会社内にあるチームだからこそ、こうした分析ができる」(顧客データ分析チームの宮入一将主査)という。
そこからテレビCMなどのマス広告やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)など、各顧客に対して適切にアプローチできる方法を模索している。
**キリンデジタルマーケティング部・戸川健司氏
【顧客視点持てる人材を社内で育成】
顧客データ分析チームの立ち上げで中心的な役割を担った、デジタルマーケティング部の戸川健司氏にデータ活用の方向性や人材育成などを聞いた。
―データをうまく活用する要素として何が必要でしょう。
「分析結果から、いかに仮説を立てられるかだ。例えば、クラフトビールとワインは選び方や飲み方が似ているから『提案の仕方を同じようにできるのではないか』といった問題意識だ」
―データ活用の方向性は。
「2016年には全事業部のマーケッターがデータをさまざまな場面で活用できるような基盤を整備する。データ分析を全社的に定着させたい。データを利活用しなければ乗り遅れる、という時代は必ず来る。それは顧客を理解できなくなることにもつながるはずだ」
―同チームの規模は拡大させますか。
「今はデジタルデータ分析に対する知見をためているところ。徐々に人数は増やしていく。そのために、専門知識のある中途採用者よりも社内で専門家を育成する。『キリンマインド』を持ち、顧客視点で仮説を立てられるような人物が理想だ」
(文=松沢紗枝)
(日刊工業新聞月曜日連載「データサイエンティスト・未来を読み解く」より)
日刊工業新聞社2015年11月02日 電機・電子部品・情報・通信面