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日本は原発技術で海外を支援できるか

日本原電がガザフスタンと覚書。次世代炉にも期待
日本は原発技術で海外を支援できるか

再稼働した九州電力の川内原発


安全審査申請、今後10年で実用化へ


 高温ガス炉の研究開発を巡っては、原子力機構が茨城県大洗町に試験研究炉「HTTR」を建設、98年に初臨界を達成した。東日本大震災を受けて現在は停止中だが、14年11月、原子力規制委員会に安全審査を申請。今秋以降に運転を再開させる方向で、原子力規制庁の聴取を受けているという。

 「原子炉に関わる技術はおおむね整っている。ブレークスルーが必要な技術はない。完成に近いところに来ている」。原子力機構原子力水素・熱利用研究センターの國富一彦センター長は、高温ガス炉の研究開発状況についてこう強調する。HTTRでは初臨界以降、性能試験を重ねて技術を蓄積してきた。

 04年には、原子炉から出るヘリウムガスの温度を950度Cにすることに成功。10年には、出力を30%に抑えた条件下ながらも、冷却材であるヘリウムガスの循環を止めても原子炉が安定して停止することを確認した。運転再開後はより厳しい条件での安全性試験などを行う方針だ。
 
 課題は接続技術

 課題は熱利用系の設備とその接続技術だ。特に水素製造での利用を想定して技術を開発している。硫黄とヨウ素を使い900度C以下の熱で水を分解し、水素を作る方式を採用する。14年3月に試験装置が完成。15年度中に水素製造試験を始める。

 HTTRに接続するガスタービンや水素製造設備の安全設計も進めている。今後2年程度で完了し、安全審査を受けたうえで接続工事を行う。HTTRから取り出す高温のヘリウムガスを使った発電・水素製造試験につなげたい考えだ。國富センター長は、「発電・水素製造試験ができれば、実用化のカギになる技術開発は終わる。今後10年で実現させたい」と意気込む。
 

新興国が着目


 海外では中国が高温ガス炉の開発にもっとも積極的だ。熱出力25万キロワットを2基、発電ベースで合計21万キロワットの実証炉を17年12月に完成させる予定だ。韓国は製鉄や燃料電池で利用する水素製造プラントとして研究を進めている。

 そのほかの新興国でもエネルギー需要の高まりを背景に、高温ガス炉の利点に着目して計画が進む。インドネシアは地震が多いため、安全性に注目して計画。カザフスタンでは内陸部でも建設できるという理由で研究している。
 
 経産省、灯火絶やすな

 経済産業省は次世代原子炉「高温ガス炉」に対する姿勢を明確にしていない。基礎的研究が中心の文部科学省と違い、経産省の技術開発支援の大半は実用化がゴールとなる。新たな原子力技術の実用化とはつまり、原子力発電所の新増設につながる。

 安倍晋三政権は「現時点で原発の新増設を想定していない」との立場を崩していない。その中で、経産省が単独で原発新増設を想起させる次世代原子炉の実用化支援策を強く打ち出しづらい状況にあると見られる。

 一方で現在、経産省は2030年の望ましい電源構成(エネルギーミックス)を策定中だ。全基停止している原発の比率は全電源の20%強に設定する方向だ。原発の耐用年数は40年と定められている。比率目標を達成するためには老朽原発の運転延長か、新増設しか選択肢はない。

 経産省は今のところ運転延長を想定している模様だが、産業界では原発新増設を求める声が依然として根強い。再稼働の時期が見通せない現状では新増設へのハードルが高いのは事実。しかし、今後の電気料金動向やエネルギー安全保障などの観点から、社会の風向きが変わる可能性も捨てきれない。

 経産省は15年度予算に高温ガス炉も視野に入れた「革新的実用原子力技術開発費補助金」事業を引き続き盛り込んだ。将来の選択肢を狭めないためにも、次世代原子力技術開発の灯を絶やすべきではないだろう。
日刊工業新聞2015年10月29日 3面
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
小さな記事だが原子力発電関係者にとって嬉しいニュースである。エネルギー資源の乏しい海外の国々にとって、強度の地震に耐えられる日本の最新の技術を提供できることは近隣諸国に無用な不安を与えず、かつ、日本にとっては、原子力発電技術に関するたゆまぬ研究開発の継続につながり、若手技術者の育成につながるからである。関係者は、世界に向かって日本の優れた最新技術の普及に努めてほしい。

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