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事前予約で5.8億円の注文受けたカメラEC「Peak Design」

文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)「お客さんを幸せにするために」を当たり前に追求
 今では携帯電話のカメラ機能がかなり進化していて、コンパクトデジタルカメラ顔負けの写真が撮影できるような機種もかなり見られるようになった。有名人などが集まる場所などでも観客たちが携帯やスマホをかざして写真を撮る、という姿はすっかりお馴染みになったと思う。

 携帯やスマホで写真を撮ることのもう1つの利点は、かさばらないことだろう。特に質の高い望遠レンズを備えた一眼レフカメラなどはゴツく重い。カバンに入れればかさばり、首にぶら下げれば重く動きづらく、どうにも良いポジションを見つけにくい。

 そんな「重たいカメラの持ち運び」の新しいスタイルを次々と提案しているのが、今回紹介する「Peak Design」だ。
https://www.peakdesign.com/
この「Peak Design」はカメラ好きな人を想定し、カメラ好きが“こんな商品があったらいいな”と思うことを実現した商品を設計。多くの人から支持を受け、カメラをベルトやバッグに固定できるキット、カメラ専用に作ったバッグなどを自ら製造し、販売している。

 また、製品開発するたびにクラウドファウンディングサイトの「KickStarter」で資金を募るスタイルを採用していることも特徴の1つ。最新商品であるカメラ好きのためのバッグ「The Everyday Messanger」は、総額486万ドル(約5億8000万円)と、「KickStarter」史上最高の支援金を集めたという。

一眼レフカメラは持ち歩きたくてもかなり邪魔になる


「Peak Design」が支持を集めているポイント
◎カメラを日常的に利用する人のかゆいところに手が届く商品開発
◎クラウドファウンディングサイトを活用しニーズの把握、商品資金を
◎「お客さんを幸せにするため」の施策を実行に移している


 「Peak Design」の創業者は、建築会社において土木技師として働いていたPeter Dering(ディリング)氏。2007年にニコンのカメラを購入してから写真撮影に没頭し、カメラを常に持ち歩くようになったという、大のカメラ好きだ。

 ディリング氏は2008年、休暇を取って写真撮影の旅に出ることになった。香港、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、インド、シンガポール、ニュージーランド、オーストラリアなどを、バイクで旅したという。2010年には米国カリフォルニア州のヨセミテ渓谷にバックカントリースキーをしにいった。

 カメラに夢中になっていたディリング氏はもちろん、この2つの旅の両方でカメラを携帯していたが、旅を重ねるにつれ、カメラを持ち歩くことがいかに不便で煩わしいかを実感するようになったという。

 特にバックカントリースキーでは、重たいリュックやスキースティックを持ちカメラを首に掛けることなどできない。そのため、カメラをリュックに入れて持ち運び、必要なときにリュックを下ろし、荷物の中からカメラを掻き分けて取り出す必要があった。

 そこでディリング氏は、もっとカメラの持ち運びやすい方法はないかと、製品開発を考えるようになった。そして2011年、カメラをベルトやストラップ、バッグなどに簡単に付け外すことができるストラップ「Capture Camera Clip System」を開発、「KickStarter」で支援を募った。

 これが5200人以上の支援者からの支持を得て、目標金額1万円を超す36万ドル(約4300万円)の支援金を集めることに成功。その後、1年ごとにカメラのアクセサリーを中心とした新商品を「KickStarter」でリリースするようになったのだった。

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
カメラ関連とクラウドファンディングは相性が良い気がする。かなりの需要家が存在し、その一部だけが反応してもこの金額になるんだと。デジタルな商品に対しアナログなアクセサリーに目をつけたところがいい。

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