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無料でハイヤー通勤しながら転職相談、ソフトバンク×トヨタなどMaaS実証

パーソルキャリアと共同実施
無料でハイヤー通勤しながら転職相談、ソフトバンク×トヨタなどMaaS実証

共同実証プロジェクト「Showfar」のイメージ

ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社であるモネ・テクノロジーズ(東京都千代田区)とパーソルキャリア(同)は22日、個人が通勤時間を活用して自分に興味を持つ企業とオンライン面談できるMaaS(統合型移動サービス)の実証プロジェクトを始める。専属ドライバーが運転するハイヤーに乗って通勤しながら、転職などキャリア形成を検討できるサービスの事業可能性を検証する。移動時間を活用した新サービスを構築し、MaaS市場の活性化などにつなげる。

実証プロジェクトの名称は「Showfar(ショーファー)」。キャリア形成に悩みを持ちながら、多忙で考える余裕がない人に対し、通勤時間を有効活用してキャリアの可能性を発見できる機会を提供する。

参加者は約2カ月の間に毎週1回、自宅から勤務先まで専属ドライバーが運転するハイヤーで通勤する。車内にはオンライン通話ができる端末を設置しており、毎回20分程度でパーソルキャリアのカウンセラーや個人に関心を持った企業と面談する。具体的には、1週目は自身の仕事経験を話すとカウンセラーが履歴書や職務経歴書の作成を代行する。2週目はカウンセラーとの面談を企業にライブ中継する。3―8週目には企業と1対1で面談し、企業から自身の評価などを聞ける。

個人は履歴書などを準備をしたり、企業に出向いて面談したりせずに自身の市場価値や可能性を把握できる。一方、企業は自社に来てほしい人材に直接アプローチできる。

参加者は関東近郊在住者を対象に2021年2月末まで募集する。抽選で30人程度を選び、無償でサービスを提供する。

モネ・テクノロジーズはMaaS市場の拡大に向けて、多様な交通手段をつなげて移動を快適にするだけでなく、移動時間における価値ある体験の提供も重要視している。19年3月にコンソーシアムを立ち上げ、多様な企業との共創により、そうした体験ができるサービスの構築を模索している。

ショーファーの狙いや提供価値を担当者に聞いた

「ショーファー」の狙いや提供価値について、パーソルキャリアやモネ・テクノロジーズの担当者に聞いた。(回答者はパーソルキャリアのデータ&テクノロジーソリューション部に所属する桑原悠シニアエンジニアとモネ・テクノロジーズ事業企画部の手島康伸担当部長)

―ショーファーを実施する狙いを教えて下さい。
 桑原氏 (終身雇用制度の見直しや新型コロナウイルス感染拡大による将来の不透明感などを背景に)自分のキャリアを考える人が増えていますが、個人は履歴書や職務経歴書を準備して考える時間を設けづらい実態があります。そこで、(すでにある)通勤時間自体を変えられないかと考えました。また、企業から関心が届く(転職支援)サービスは多くありますが、テキストによる企業紹介が多いです。それでは自分がその企業に転職して活躍するシーンは想起しにくいと考えています。そのため、個人になるべく負担をかけず、企業と出会ってもらえるようなサービスを始められないかと思いました。

―モネ・テクノロジーズとしてはいかがですか。
 手島氏 我々はA地点からB地点への(快適な)移動だけでなく、その移動の間における価値ある体験も作っていきたいと考えています。ショーファーは、これまで何もしていなかった通勤時間を、キャリアを考える時間に変えるユニークなアイデアです。また、完全なプライベート空間を作り出すことを見据えたサービスで、それは自動運転(が実現する未来)にフィットします。そうした部分に共感しており、一緒にサービスを作りたいと思っています。

―コロナ禍に伴うリモートワークの普及は、通勤時間を減少させ、キャリアを考える時間の余裕を生み出したという指摘も聞かれます。その中であえて通勤時間を活用する理由は。
 桑原氏 コロナ禍でも完全リモートワークの実施は一部で、多くのビジネスパーソンは一週間に数回は出社しています。各種調査でも半数から7割(のビジネスパーソン)が出社しています。その中で、電車での通勤は不安を覚える時期でもあります。ショーファーは(車の中という)プライベートな空間を使ってそうした不安を払拭しつつ、(元々あった)時間を有効活用できます。

―オンライン面談はお昼休みに実施する選択肢などもあると思います。車の中で提供する価値はどこにありますか。
 桑原氏 個人的な情報を安心して話せる(車の中という)プライベート空間は価値になります。例えば、在宅勤務中の昼休みなどに行う場合、子どもの声や環境音が気になるかもしれません。また、朝の固定された通勤時間であれば、企業との日程調整も(昼休みより)行いやすいと考えています。

―なるべく個人が参加しやすい仕組みを構築されたように思います。サービスの提供対象としてはそれほど優遇してまで企業が入社して欲しいと思うような即戦力人材を想定しているのでしょうか。
 桑原氏 実証では広く個人を募集します。実際にどのような個人がサービスを喜ぶのかを知りたいのが本音で、参加者に条件は設けていません。(需要者として)仮説しているのは「忙しい方」です。我々の転職サービスは20―40代をメーンの対象にしており、そこは今回のプロジェクトでも変わりません。また、今すぐ転職したい人に限らず、まずは興味を持つきっかけになればと思っています。

―企業側の需要は見込めますか。
 桑原氏 企業の(人材獲得に関わる)課題はコロナ前後で変わっていません。入社してほしい人や、自社に興味を持ってもらいたい人と一度話したいけれど、なかなかその機会が得られていないということです。既存の人材市場において企業は多くの個人にテキストメールを送って(アプローチして)いますが、その中のわずか数%が実際に話せるという状況です。素敵な企業ながら、有名ではないために個人に選ばれないケースは多いです。

―パーソルキャリアとしてはそうした企業の課題を解決する機会を提供して収益を上げると。
 桑原氏 (ビジネスモデルの)仮説としては、個人に自社を直接アピールできる機会を企業に提供し、そのためのシステム利用料をいただく形です。まずは実証で企業にショーファーがどのように評価されるのかを検証し、ビジネスの可能性を判断します。

―モネ・テクノロジーズとして実証プロジェクトで検証したい点はありますか。
 手島氏 参加者が体験に満足するような、プライベート空間をしっかり作り出せるかを検証したいです。また個人的には、ショーファーは履歴書の作成や企業の検索といった転職活動に関わる多様なプロセスの消去に挑んでいます。そうしたサービスに対する参加者の反応に興味があります。

日刊工業新聞2020年12月22日記事に大幅に加筆
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
個人的には一度体験してみたい、面白い試みに感じました。ハイヤーを出すなど運営には結構なコストがかかるように思われるので、事業可能性としては、企業がそれだけの費用を支払うほどの価値を感じるか否かがポイントでしょうか。

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