【動画あり】廃校など空き公共施設を使う新しい企業誘致が活発化のワケ
新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークやオンライン会議が浸透しつつあり、自治体ではコストをかけた大規模な企業誘致の期待が薄まっている。そこで注目されているのが空き公共施設の活用だ。千葉県は空き公共施設を新たな受け皿に企業誘致を始めた。人口減少や市町村合併で役目を終える施設が増加していることなどから、総務省は「公共施設等総合管理計画の策定要請」を出した。古くて新しい地域資源の活用は全国の自治体にとって地方創生の試金石になりそうだ。(前田健斗)
文部科学省によると、千葉県では少子化や市町村合併などを背景に、2002年度から17年度までに153の公立学校が廃校となった。そのほかの公共施設でも空洞化が目立つ。それらの維持管理には年間数百万円かかるとされ負担となっている。
千葉県は空き公共施設の活用で税収増や自治体の負担軽減、地域活性化につなげようと、16年に「空き公共施設を活用した企業誘致推進事業」を始めた。学校や保育所などとして使われてきた物件を集め、県内外の企業に情報提供する。19年度末までに28社が活用した。現在も16市町27施設で企業を募集中だ。空き公共施設で累計13件の活用実績を持つ南房総市の商工観光部は「新業態の展開で地域のにぎわいが増した。施設維持の負担軽減など市側のメリットも大きい」(担当者)と強調する。
コロナ禍では屋外型の観光需要の高まりを背景に、キャンプ場やグランピング施設の運営企業からの問い合わせが増えているという。19年から旧長生高等技術専門校(長生村)でアウトドア・グランピング施設を展開するBUB(東京都品川区)の一戸悠人最高経営責任者(CEO)は、「企業側のコストメリットだけでなく、地方の過疎化を食い止める役割も担える」と話す。
進出企業と地場企業との連携による相乗効果も期待されるが、これまでに企業間連携の実績は乏しいとされる。ちばぎん総合研究所の水野創会長は「企業それぞれ規模も文化も異なる。じっくりと醸成していけばよい」と説く。空き公共施設を資源として前向きに捉える千葉県の事例は、人口減少社会における地方創生モデルの一つとなるかもしれない。